デリケートな個人情報を扱う病院や医療施設で実習を受ける機会が多い看護学生に向け、沖縄県浦添市当山の浦添看護学校はこのほど、ソーシャルメディア利用のガイドラインを策定した。教職員だけでなく学生も交えて内容を決め、具体的なトラブルの事例も盛り込んだ。知念榮子校長は「よく考えてソーシャルメディアを使い、安易な投稿を踏みとどまってもらえたら」と話している。
「事例5 教科外活動のイベントで妊婦体験をした学生たちが、ふざけた態度の動画を撮影し、クラスのLINEに投稿した。映像を不快に思ったクラスメートが他のSNS(会員制交流サイト)に投稿し、拡散した」―。ガイドラインには学生が陥りやすそうな事例が並ぶ。どこが問題か、どういうことが起こりうるか、その結果どうなるかを分かりやすく説明している。
写真共有アプリ「インスタグラム」、短文投稿サイト「ツイッター」。学生たちにとって、SNSを含むソーシャルメディアは幼い頃から身近な存在だ。知念校長は「医療系はSNSでのトラブルに巻き込まれやすい。いつか大きな問題が起きないかと不安があった」と打ち明ける。作成に当たっては「教職員だけで作ると当事者意識を持ってもらえない」と、学生会にも参加を呼び掛けた。教員が作った原案を基に、文面の読みやすさ、イラストの配置やレイアウトなどを話し合った。大きさにもこだわり、常に持ち歩けるようコンパクトな手帳サイズにした。
学生アンケートも実施し、意見を反映させた。同校2年で策定に携わった大山結子さん(20)は「ガイドラインを見て、小さな行動が大きな問題につながると知った。守秘義務もあるし、看護の勉強にもなった」と話す。
教職員の意識も変わった。長濱マチ子副校長は「当初は使っては駄目という意識だった。でも、学生たちと話すうち、彼らに使わないという選択肢はないと気付いた。じゃあどう使えばいいのかと考えた」と振り返った。学生会長の仲田武将さん(19)は「いい体験だったし、知識も付いた。今後はガイドラインを使って月に1回読み合わせをしていく」と活用する考えを強調した。 (前森智香子)