「炎上」で閲覧増 ネットギーク、基地抗議を侮辱 <沖縄フェイクを追う>③~収益目的で攻撃❶


この記事を書いた人 大森 茂夫
基地建設に反対する人たちの抗議行動について「サルと同じ」などと書いた「ネットギーク」によるツイッターの発信記事

 「バイオハザードより怖い。沖縄基地反対派がフェンスをガンガン揺らす様子」

 「沖縄に集まった基地反対派のプロ左翼、行動がサルと同じだと話題に」

 「その姿は完全に理性を失った野生動物」

 これらは、米軍北部訓練場のヘリパッド建設、名護市辺野古の新基地建設に対する抗議行動について、あるサイトから発信された記事や見出しの一部だ。

 サイトの名は「netgeek(ネットギーク)」。2013年に立ち上がり、攻撃的な表現を含んだ記事を次々と発信し続けている。

 ネットギークが発信した沖縄関係の記事は、確認できるだけで27本存在する。記事は15年4月~18年10月末までの間に投稿された。記事では基地建設に反対する人々の抗議行動を、ゾンビが出てくる海外映画になぞらえ「バイオハザードより怖い」と表現したり、サルなど野生の動物に例えたりして侮辱した。

 北部訓練場のヘリパッド建設が進むさなか、大阪府警から派遣された機動隊員が、基地に反対する人々に「土人」と発言した問題を引き合いに出して「このような話が通じない相手に『土人が』などと言い返しても何ら処罰の対象になるべきではないだろう」とした。県民に向けられた差別的発言を肯定するかのような表現だった。

 このサイトにはいくつもの広告が掲載されている。サイト内の記事の信頼性などには関係なく、インターネットの利用者がサイトを訪れ、ページを閲覧するだけで、運営者に広告収入が入る。関心を呼ぶ記事を発信して閲覧数が増えれば増えるほど、運営者の利益が膨らむ仕組みだ。

 ネットギークのサイト閲覧数をネットで調べたところ、18年9月は300万を超えていた。それ以上閲覧されていた月もあるとみられる。1回の閲覧で得られる運営者の利益はサイトによって異なるが、ネットギークの運営者は月に100万円程度の利益を得ていたとみられている。目を引く扇動的な見出しや過激な内容であるほど、閲覧数が増加する傾向にあり、その結果、運営者はより多くの収入を得られることになる。

 さらに、このサイトはツイッター(短文投稿サイト)やフェイスブックなどSNS(会員制交流サイト)でも情報を発信して、記事を拡散している。

 ネットギークについて追及してきたネットメディア「バズフィード・ジャパン」の古田大輔創刊編集長は、同サイトの情報拡散力に注目する。

 古田氏によると、17年9月17日、(衆院選の)選挙日程を各紙が一斉に報じた日から投開票日までの約1カ月の記事を調べたところ、ネットギークの記事は閲覧されたトップ100のうち15本を占めていた。朝日新聞は11本、産経新聞は9本だった。全国紙の記事より多く見られていた。

 ネットギークの記事は既存メディアよりもネット上ではより高い関心を持たれていることが分かる。閲覧する人が多ければ多いほど、その記事の社会に与える影響は否定できない。

 より攻撃的で炎上を狙った見出しを付け、SNSなどを通して拡散し、サイトの閲覧者数を増やしてきたネットギーク。沖縄もこのサイトの「餌食」となり、偽のニュースが次々と拡散された。沖縄について誤った認識が全国に広まり、基地問題への理解を阻んでいる。
(ファクトチェック取材班・池田哲平、安富智希)