社会
沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇~

記事拡散 膨らむ利益 報酬は能力で階級分け 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈4〉~収益目的で攻撃❷

報酬体系などについて記されているウェブサイト「ネットギーク」の資料

 沖縄で基地建設に反対する人々を野生動物に例えるなど、侮辱する記事を発信しているウェブサイト「netgeek(ネットギーク)」。既存のメディアを上回るとも言われる情報の拡散力はどのように生み出されたのか。

 ファクトチェック取材班は、ネットギークが記事を編集するために使っている“手引書”を関係先から入手した。「netgeek編集ルール」と題する2分冊の合計25ページの資料で、表紙には「社外秘」と書かれている。ページをめくると、収益を増やすために、攻撃的な内容を含む記事が量産されていく構造が浮かび上がる。

 第1分冊の15ページにはフェイスブック(会員制交流サイト)で記事が広く拡散されるにつれ、1本の記事の報酬が上がるという独自の賃金体系が示されていた。

 執筆者は「能力」に応じて「アナリスト(分析者)」「アソシエイト(仲間)」「ディレクター(管理者)」という三つの階級に分類されている。記事の報酬額は公開2日後に決まる。その記事が2日間にフェイスブック上でどれだけ共有(シェア)され、どれだけ多くの人々に届いたかが基準となる。

 報酬額は「シェア500未満」「500~」「1000~」「5000~」「10000~」の4段階に分かれている。1万件以上だとアナリストは3千円、アソシエイトは4500円、ディレクターは6700円だ。同じ共有数でも執筆者は階級によって報酬額に2倍の差が生まれている。

 そして3階級とも「シェア500未満」だと、報酬額は一律「0円」だ。その理由も記されている。「サイト閲覧者にとってつまらない記事はない方がいい」「フェイスブックは(中略)イイネがもらえないサイトは記事がユーザーに配信されなくなる」ことを挙げる。ネット上で記事が拡散されることを最重要課題に掲げているのだ。執筆者に支払われる報酬はそれほど高いとは言えない。

 記事が共有されればされるほどサイトの閲覧者も増加し、運営者がサイト上の広告収入によって得られる利益も膨らむ。記事の執筆者も記事が共有されるほど、報酬は増えるが利益は運営者の方が多く得る形だ。広く共有される記事を書くことで程度の差はあるが、サイトの運営者、執筆者の利益に直結する仕組みとなっている。




狙いはシェア増/「関心引くタイトル」重視

 琉球新報のファクトチェック取材班が入手したウェブサイト「netgeek(ネットギーク)」の“手引書”。その「netgeek編集ルール」には文体のルールや編集画面の操作方法に加え、数多く共有されるための技術も書かれていた。重要視していたのは記事の「タイトル」の付け方だ。「編集ルール」には「タイトルが面白いとそれだけでシェアされる」と強調している。

 (1)注目されるキーワードを入れる(2)大げさにする(3)「衝撃の結末が」など、ついクリックしたくなる(内容の)隠し方をする―など、タイトルを付けるこつも示されていた。

 この編集ルールに沿って実際に書かれた記事やタイトル、フェイスブックの記事説明文には、ネット上での炎上を狙っているとしか思えない表現が散見される。


「SEALs」(シールズ)のメンバーの写真を並べ、氏名や大学名なども記したネットギークが2016年10月に発信したフェイスブックの記事(画像は一部処理しています)

 例えばネットギークが2016年10月に発信した「沖縄のヘリパッド建設に反対している団体の正体、解散したはずのSEALDsと判明」というタイトルの記事がある。

 この記事は、米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の建設に反対する市民団体が結成された際に書かれていた。記事中には団体に参加した自由と民主主義のための学生緊急行動「SEALDs」(シールズ)のメンバーの写真が並べられ、氏名や大学名なども記されている。

 そして、ネットギークがフェイスブックに発信したこの記事に対する書き込みでは「オウム真理教予備軍のお前らの顔と名前は覚えた」などと書かれている。この記事に3689人が「イイネ」のボタンを押し、共有は483件に上っていた。

 「SEALDs」の学生を「オウム真理教予備軍」とするのは明らかな虚偽だ。基地建設の抗議行動に対する偏見をあおり、個人情報をネットにさらしている。

 その一方で「編集ルール」の末尾には、執筆者に向けて「運営者にかかわる情報は一切漏らさないこと」と記している。収益のために他者を攻撃しつつ、自らの正体を必死で隠そうとするネットギークの実態が浮かび上がる。
 (ファクトチェック取材班・池田哲平)