社会
沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇~

姿現さぬサイト運営者 中傷記事、自ら多数執筆か 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈5〉~収益目的で攻撃❸

ウェブサイト「netgeek(ネットギーク)」が情報を発信する拠点の一つだったとみられるマンションの一室のドア=2018年11月、東京都内

 2018年11月下旬、東京都渋谷駅から、にぎやかな通りを抜け、路地に入ったところに目指すマンションはあった。階段を上り、3階にある一室を訪ねた。表札もない、無機質な薄い桃色のドアに向かい合った。この部屋はウェブサイト「netgeek(ネットギーク)」が情報を発信する拠点の一つだった。ドアの前でしばらく待ったが、部屋の中に人がいる気配はなかった。

 ネットギークは沖縄県で新たな基地建設に反対する人々や抗議行動などを揶揄(やゆ)したり、中傷したりする記事の掲載を繰り返しているサイトだ。

 サイト上では運営者の情報について「netgeek編集部」とだけ記載し、所在地や運営責任者名などは明かしていない。

 サイト運営者が、関係者向けに出した資料「netgeek編集ルール」でも「運営者にかかわる情報は一切漏らさないこと」という約束事項が示されており、拠点の所在地を含め、運営者の情報は徹底的に隠している。

 琉球新報ファクトチェック取材班は複数の関係者からの情報を基に、運営者の氏名、携帯電話番号、メールアドレス、拠点の住所を把握した。運営者に直接会って発信の意図などを取材するためだ。

 拠点を訪ねたが、運営者は不在だったため、運営者のメールアドレスに氏名と連絡先を記し、メールを送信した。しかし、現時点で返信はない。

 運営者の携帯にも何度か電話を掛けた。しかし、一度も相手が電話に出ることはなかった。当初は呼び出し音が鳴っていたが、昨年の12月中旬以降は「お掛けになった番号をお呼びしましたが、お出になりません」というメッセージに変わっていた。

 関係者の話を総合すると運営者は30代男性とみられる。そして、本人も「腹BLACK」という署名で多くの記事を書いている。

 ネットギークが掲載した沖縄に関する記事は確認できるだけで27本。そのうち25本の記事に「腹BLACK」の署名が入っていた。基地建設反対の抗議行動を「サルと同じ」と例えたり、フェイク(偽)の言説を含んでいたりする記事は、全てこの署名で発信されていた。


個人の権利 侵害 運営者、無断画像使用も

 沖縄県で新基地建設に反対する人々を中傷する記事などを拡散している「netgeek(ネットギーク)」は、運営者の情報について徹底した秘密主義を貫いている。

 ネットメディア「バズフィード・ジャパン」はネットギークの運営情報に迫る取材を重ね、いくつもの記事を掲載している。取材に対し、ネットギーク側は運営者情報を明かさない理由について「何かやましいことがあるからというわけではなく、スタッフの身の安全を守るため」と説明している。

 しかし「スタッフの身の安全を守る」としながら、ネットギークはこれまでSNS(会員制交流サイト)などで「標的」を見つけると、個人攻撃を続けてきた。その個人攻撃を含んだ記事を拡散させ、収益を増やすために利用してきた側面がある。

 さらに著作権も侵害している。ネットギークで記事にされ、ネット上で中傷を受けた被害者の一人は、取材に対して「突然、無断で自分がツイッター(短文投稿サイト)で発信した画像を使われた。何の連絡も受けていないし、抗議しようにも、どこに連絡していいのかも分からなかった」と語った。

 2018年11月以降、ネットギークに対して集団訴訟を提起する動きも起きている。この動きに対応するためなのか、「腹BLACK」の署名で同年11月19日、1本の記事が掲載された。


ネットギークが2018年11月19日に掲載した「『netgeekに画像使われてAmazonギフト券GETキャンペーン』を検討しております」というタイトルの記事。現在は見ることができなくなっている

 「『netgeekに画像使われてAmazonギフト券GETキャンペーン』を検討しております」

 記事は過去にさかのぼり、ネットギークに写真を使われた人が申請すると、数百円のギフト券が贈られるという内容だ。この「キャンペーン」については「権利者様の権利を保障したい」などとうたっている。裏を返せば、これまで個人の権利を無視して画像を無断使用していたことを自ら認めた形だ。この記事は現在、削除され見ることができなくなっている。

 サイトの説明文で「日本初のバイラル(感染的な)メディア」と自称している。「バイラル」とはSNSで拡散させることを意味する。しかし、運営の在り方をみると、SNSで拡散する目的はニュースの発信よりも、収益目的で収拾が付かなくなるほど批判や非難が殺到する「炎上」をさせることにあるように映る。

 自らの安全を守るために顔を隠しつつ、通告なしに個人の権利を侵害する。そして、権利侵害や個人攻撃を含んだ記事によって収益を得てきた。「メディア」という看板とは遠く離れた場所にネットギークは存在していた。
 (ファクトチェック取材班・池田哲平)









  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス







  • 他のサービス