社会
沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇~

元執筆者、報復恐れ 「運営者情報ばらすな」 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈6〉~収益目的で攻撃❹

ウェブサイト「ネットギーク」で記事を執筆していた男性。携帯やパソコンで運営者の男性とやりとりをしていた=2018年11月、関東地方

 「何かあったら、守ってくださいよ」。2018年11月下旬、関東地方の駅前にある商業施設の飲食店。記者と向かい合った男性は不安げな表情を浮かべて口を開いた。

 この男性は、沖縄の基地建設に反対する人々を中傷するなどした記事を発信していたウェブサイト「netgeek(ネットギーク)」で、ライター(執筆者)として記事を書いた経験がある。取材に応じて内実を明らかにしたことが、ネットギークに知られてしまうことを恐れていた。

 男性は数年前、業務委託契約のライターとしてネットギークで記事を書いていた。沖縄関係の記事は書いたことがない。ネット上で話題となっていることについてまとめていたという。

 男性がライターとなったのはサイトにある「採用情報」の欄を見たことがきっかけだ。採用情報にはこうある。「ネタ探しから記事執筆までマニュアルに従って作業して頂きます」。待遇は「時給換算で高めになるよう設定しております」としていた。

 「多くの人が見ているサイトで記事を書けるのはすごい」。アルバイトの感覚で応募したという。サイトから申し込むと、メールで履歴書のフォームが送られてきた。この履歴書に必要事項を書いて送信すると、すぐに電話が掛かってきた。

 「編集部です」。若い男性の声が聞こえてきた。そのまま電話による面接が始まった。

 面接で特段、変わったことを聞かれた覚えはなく、その場で「採用」された。編集部の男性は「運営者の情報をばらさないように」ときつい口調で言い渡して、電話を切った。

 ネットギークの記事のノルマは1日2本。電話面接した男性は「編集長」だった。ネット回線を使った通信アプリ「スカイプ」で「書き方」の講習を受けた後、記事を書き始めた。その後の編集長とのやりとりも、スカイプで連絡を取り合った。


執筆報酬 抑える 退職申し出に賠償請求

 基地建設に反対する人々らを中傷する記事などを拡散している「netgeek(ネットギーク)」の編集長は、ライターの男性に対して「慣れれば一つの記事は30分ぐらいで書けるよ」と話し、記事の添削や画像の選び方などについても細かく指示を出した。

 「文章はいい感じです。この調子で頑張りましょう」

 「タイトルは見た人が興味をもってクリックするように」

 「画像が面白いと、それだけで『いいね』がもらえる」

 指導は丁寧で1本の記事に何度もやりとりした。だが、ネットなどで話題になった出来事をSNS(会員制交流サイト)でいかに拡散できるかに重点が置かれていた。「スカイプ」にはテレビ電話の機能もあるが、やりとりは音声通話とメッセージだけだった。編集長と一度も顔を合わせたことはなかった。
 琉球新報が入手した「netgeek編集ルール」によると、フェイスブックでの共有(シェア)の数が500未満だと、ライターの報酬は0円と記されている。

 ネットギーク運営者は、外部ライターによる記事でサイトの閲覧者数を増やし、広告収入を得ていた。その額は月に百万円ほどに上るとみられている。ネットギークが運営しているフェイスブックページで確認すると、共有500を満たない記事がほとんどだ。運営者が外部のライターに支払う報酬は低く抑えられていたとみられる。


ネットギークの運営会社から元ライターに送られてきた「損害賠償」を求めるメール(画像を一部加工しています)

 男性は「時間をかけて記事を書いてもほとんど稼げなかった。別で働いた方がいいと思った」と振り返る。男性が短期間で退職を申し出ると、すぐに男性の元へ1通のメールが届いた。差出人はネットギークの運営会社だった。

 「契約上の職務を全うせず一方的に契約破棄した件について、損害賠償の支払いを請求します」

 メールは男性が「一方的に契約破棄した」として、5万円の損害賠償を求める内容だった。メールには支払期日と、口座番号などが記され、振り込みがない場合「訴訟を起こします」としている。

 男性は求めに応じず、金銭を支払っていない。その後、連絡はないという。男性は「ネットギークのやり方を見ていると、徹底的に仕返しをしようとしてくる。今でも危害を加えられるのではないかと怖い」と語った。
 (ファクトチェック取材班・池田哲平)