社会
沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇~

2紙は外患誘致罪 ブログ主宰者が告発状 連載「沖縄フェイクを追う ネットに潜む闇」〈13〉~ヘイトの増幅❶

インターネット上のブログ「余命三年時事日記」で、沖縄2紙に対して「外患誘致罪」の適用を求めていた書き込み(ブログの画面を画像化しました。複数の箇所を抜粋しています)

 2016年10月25日、ある人物が琉球新報社と沖縄タイムス社を刑事告発した。東京地検の検事正宛ての告発状によると、罪名は「外患誘致罪」。告発理由にはこう記されている。

 「沖縄での両社の報道姿勢は外国勢力と通謀し、国内の反日勢力を擁護する姿勢が鮮明となり、特に中国に対して武力行使を誘引するメッセージとなっている」

 外患誘致罪は刑法上最も重い罪で「外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は、死刑に処する」と規定している。告発状は両社の社長を名指しで刑事告発し「死刑」にするよう、検察に求めていた。

 この告発状の被告発人には「基地周辺で反対行動をとる者および組織」も含まれている。そして、基地建設に反対する人々に対して「基地前の集団については外患誘致罪およびテロゲリラ、便衣兵(民間人に偽装して敵対行為をする軍人)として速やかに処罰するよう告発する」とも記している。基地建設に反対する住民の行動を「テロ」と仕立て上げ処罰を求めていた。

 ファクトチェック取材班は東京地検に、この告発状の取り扱いについて問い合わせた。返ってきた回答は「個別の事案にお答えできない」だった。告発から2年以上経過しているが、両社の社長が同罪で刑事訴追された事実はない。

 告発状を出したのは「余命三年時事日記」というインターネット上のブログを主宰している男性だ。06年に開設されたブログの主は「余命爺(じい)」を名乗り、病気で伏した個人が日常の出来事をつづったものとしている。初代のブログ主宰者が亡くなった後も、周囲にいた人が遺志を引き継いで続けているとされている。

 15日時点で、ブログで発信されている記事は2768件確認できる。「反日」「左翼」などの言葉が並び、中国や韓国、在日朝鮮人などを中傷する内容が数多く掲載されている。さらに、ブログの内容は書籍化もされている。ブログの記事を見ていると個人や行政機関、報道機関などを対象に処罰を求める告発状を検察などに送りつけていた。告発には、ブログ主宰者だけでなく、記事に呼応した読者も深く関わっている。

 沖縄2紙を刑事告発したという記事には、ブログ読者がこう書き込んでいた。

 「いよいよ始まりましたね、外患罪祭り。(中略)感無量です」

 「もう完全、朝鮮国は終わり。在日朝鮮人は日本人を怒らせすぎた。(中略)安倍首相と余命様の指揮司令等に従いますよ」

 余命三年時事日記という一つのブログは、読者を引き付け、ヘイト(憎悪)感情を増幅させていた。そして、そのヘイトは「告発状」として、実在社会へ向かった。さらに、このブログを発端とした弁護士への大量懲戒請求事件も引き起こされていくことになる。(ファクトチェック取材班・池田哲平)