死別・離別のひとり親に適用される寡婦控除について、婚姻歴のない未婚のひとり親にも適用するよう求めていた、当事者団体のしんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄の秋吉晴子代表=那覇市=と、子どもの貧困問題に取り組む団体「あすのば」(東京)の小河光治代表理事はこのほど、琉球新報社を訪れ、昨年12月に東京で国会議員らに面会し、法改正を訴えてきたことを報告した。
2019年度の税制大綱の改正に伴い、当事者団体らは寡婦控除の「寡婦」の定義に、離婚・死別だけでなく未婚も含むよう求めていた。しかし、一部自民党議員の反対で、定義見直しには至らなかった。
一方で、児童扶養手当を受けている世帯で、前年の合計所得が125万円以下(給与収入204万円以下)の世帯は、住民税が非課税となる負担軽減策が盛り込まれた。国会で審議後、法改正される。2019年度も20年度の税制大綱改正に向け、継続審議することになった。
秋吉さんは「一歩前進はしたが、めげずに引き続き寡婦控除の非婚世帯への適用を求めていきたい」と話し、また小河代表理事は「これは個人の問題ではなく、社会の課題である。切り崩すのは厳しい印象を受けたが、丁寧に理解を求めていきたい」と述べた。
両団体が昨年12月、国会議員や各政党に陳情、要請を重ねたところ、公明党の議員は賛同者が多かったが、自民党の一部の議員から「未婚・非婚を助長する」「伝統的な家族観が崩壊しかねない」などの意見があり、寡婦控除の全面適用への意見集約が難しかったという。
小河代表は「自民党議員の中にも賛同者はおり、多様な意見があると感じた。政治だけでなく社会にも、離婚や未婚・非婚は親の身勝手で自己責任だという根強い見方がある。子ども自身の自己否定につながってはいけない」と指摘した。
年末に向け、必要性の根拠を示す資料を集め、法改正につなげていく決意を示した。
―税制大綱改正― 住民税は軽減、給付金も
昨年12月の2019年度税制大綱の改正で、未婚のひとり親の税負担を軽減する方針が二つ盛り込まれた。一つは、前年の合計所得金額が125万円以下(給与収入204万円以下)の未婚のひとり親世帯は、住民税が非課税となる。もう一つは、児童扶養手当を受けている未婚のひとり親世帯に19年度のみ年額1万7500円を給付する。
公明党は、ひとり親の子どもの貧困対策としても、寡婦控除を離婚・死別同様、未婚のひとり親にも適用を求めたが、伝統的な家族観を重視する一部の自民党議員の反対意見が根強く、かなわなかった。付帯決議として次年度も検討課題とすることになった。
すでに複数の全国の自治体で寡婦控除を「みなし適用」し、保育料や公営住宅の家賃の算定で、未婚・非婚世帯に負担軽減の措置が取られている。しかし、住民税や所得税は対象外となっている。
現在、所得税や住民税の税負担だけでなく、保育料・就学援助・給付型奨学金などの支援制度で、寡婦控除が認められない未婚のひとり親世帯は不利益となっており、当事者団体は税法上の「寡婦」の定義に離婚・死別だけでなく、婚姻歴のない未婚も加えることを求めている。
(知花亜美)