被災を共に考える 阪神大震災24年 神戸―那覇ネットで生中継 震災で生まれた歌、合唱


社会
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神戸市と中継をつないで「満月の夕」などを合唱した参加者ら=17日、那覇市松尾の浮島じゅうてー

 阪神・淡路大震災から24年がたった17日、那覇市と神戸市を生中継でつなぐイベント「117避難所セッション」が沖縄県那覇市松尾のコミュニティースペース「浮島じゅうてー」で開かれた。約1200キロの距離を超えて、震災から生まれた歌「満月の夕(ゆうべ)」や「つる」を合唱。震災や防災について考えるひとときを共に過ごした。

 イベントは、ファシリテーターなどを務める石垣綾音さんと、神戸市出身で阪神・淡路大震災で被災した防災士の稲垣暁さんが企画した。神戸側は、稲垣さんと共に神戸のまちづくりに関わった慈(うつみ)憲一さんらが、神戸市灘区のコミュニティーカフェに集まり、通信アプリスカイプでの生中継でつながった。

 「満月の夕」は、兵庫県西宮市出身の中川敬さんがボーカルを務めるアーティスト「ソウル・フラワー・ユニオン」の歌。赤くて大きかったという震災当日の夜の月など被災後の神戸の様子を歌った。その後同じメロディーで被災地の外から歌った歌詞、沖縄の方言による歌詞なども生まれた。

 「つる」は震災の頃、城北小学校の4年生だった山田かのこさんが被災地に送ったメッセージにフォークシンガーの岡本光彰さんが曲を付けたもの。どちらも神戸で歌われ、東日本大震災の被災地でも響いた。参加者は「歌の力が市民をつなげている」と確認し合った。

 神戸との生中継の後は「災害ユートピア」という考え方を基に、震災や防災について語り合った。

 災害ユートピアとは大規模な災害時に被災者と関係者の連帯感、社会貢献に対する意識などが高まったコミュニティーが生まれる現象。稲垣さんは、がれきに埋もれた人を住民らが救助した事例を紹介。災害ユートピアは一時的なものとされるが、「神戸では困っている人を助ける文化が残った」と説明した。

 仙台市出身の皆川志保さんは、震災当時は東京にいた。地元の被災に「ショックすぎて7年たってようやく、防災に向けて何かしないといけないと思うようになった」と振り返った。参加者は「災害になる前のユートピア状態を沖縄でもつくれないか」などと提案した。