北側滑走路閉鎖1カ月 経路変更か 騒音拡大 嘉手納、機能強化に危機感


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米軍嘉手納基地で飛行訓練するKC135=6日午後0時50分(田中芳撮影)

 【中部】米軍嘉手納基地の北側滑走路が改修工事で閉鎖されて7日で1カ月を迎えた。騒音の被害が著しい嘉手納町に加え、周辺の地域には既に影響が出ている。これまで苦情が少なかった地域から騒音への訴えがあり、飛行ルートが変化しているとみられる。一方、宜野湾市の普天間飛行場では、嘉手納基地に着陸できなかった機体のダイバート(目的地変更)が増加し、訓練が過密化している。外来機の飛来も増えており周辺住民の負担は増す一方だ。 (下地美夏子、上江洲真梨子、長嶺真輝)

 北谷町は嘉手納基地から離れているが、これまで苦情があまり寄せられていなかった地域からの苦情が増えている。1月30日午後、同町北玉区の住民から町に「北玉小学校の上を嘉手納基地からの輸送機が低空で飛んでいる」との苦情が2件あり、この時間帯に同区で最大値81・8デシベルを記録した。

 同区公民館で日中働く伊志嶺友恵さんは「今まで北玉周辺で戦闘機の音をほとんど聞かなかった」とした上で、「最近は度々、戦闘機の爆音が聞こえてうるさい」と米軍機の飛行に変化を感じている。

 滑走路に隣接し騒音が常態化している同町砂辺区の伊禮嶺生自治会長は「1月ごろから『低空飛行が多い』『住宅地上空で旋回することが多くなった』との声が区民から出ている」と話す。南側滑走路での訓練縮小を求めて沖縄防衛局などに要請するよう住民らが町に直接申し入れた。

 北側滑走路閉鎖を受け、米軍へ訓練の縮小を要請したかとの本紙取材に対して、防衛局は「地元の皆さまに与える影響を、最小限にとどめるよう申し入れている」と述べるにとどめており、住民の騒音に対する反発との温度差が垣間見える。

 一方、沖縄市基地政策課の宮城克也課長は「飛行コースが変化しているのは間違いない」と見て、来週実施予定の「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」(三連協)の目視調査で飛行ルートを分析する構えだ。

 嘉手納基地では現在、常駐機の訓練に加え、相次いで飛来する外来機の訓練を南側滑走路1本で対応している。横田基地の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイが嘉手納基地に飛来したことは「今後、嘉手納基地での展開を見据えたもの」と警戒し、三連協として抗議する。

 滑走路の補修工事が基地機能の強化につながることも懸念する。昨年12月に運用が始まった伊江島補助飛行場の強襲揚陸艦の飛行甲板を模した着陸帯「LHDデッキ」との連携した訓練を想定し「CV22や伊江島補助飛行場の機体飛来など、今後(基地負担は)さらに顕著になる」(宮城課長)。負担軽減とはほど遠い現状にため息を漏らした。

 北側滑走路の工事は7月ごろ終了予定だ。同基地所属の機体は、今月中旬からタイやグアムでの訓練に参加し騒音はいったんは軽減するとみられているが、所属機が戻れば再び騒音にさらされることは確実で、周辺市町への影響は避けられない。