〔未来を築く 2.24県民投票〕2 モバイルプリンスさん SNSに誤解やデマ 「事実基に本質議論を」


社会
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自身のツイッター画面を示すモバイルプリンスさん=5日夜、沖縄市のゲート通り

 「2択が『乱暴』なら、辺野古埋め立ての1択だけで工事が進められている現状はどうなんですかね」。モバイルプリンスこと島袋コウさん(31)=沖縄市=は、辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票に向けられた批判に首をかしげる。スマートフォンを手に「議論はあって当然だが、主張の論理がめちゃくちゃでツッコミどころ満載なことがある」と語る。

 スマホなどを安全に使いこなすことを教える講座で講師を務めながら、テレビ・ラジオのパーソナリティー、ライターなど、多彩な横顔を持つ。

 学生時代を中央パークアベニューなど沖縄市の繁華街や、北谷町のアメリカンビレッジなどアメリカ文化の影響を受けた街で過ごした。米軍機の騒音もほとんど気にならないほど基地は当たり前の存在だった。

 2004年に沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した時は普天間高校の3年生。事故があった日は同大に願書を取りに行っていた。「びっくりはしたが、基地問題に関心を持つようなことはなかった」

 講座ではスマートフォンアドバイザーとして参加者に「インターネットには真偽不明の情報がある。気を付けてください」と注意喚起してきた。参加者には高齢者が多く、雑談する機会も増えた。「生きるために必死だった。米軍物資を盗む戦果アギヤーもいたよ」。戦後の苦労話などを聞く中で意識が徐々に変化していった。「戦後を生き抜いてきた人たちがいて、今の沖縄がある」。歴史を線で捉え、物事を見るようになった。そうなると、SNS上で散見される沖縄に関する「誤解」や「デマ」を放置できなくなった。

 「辺野古に移設しないと中国に侵略されてチベットみたいになるぞ。そうしたら民主主義とか言ってられないぞ」。SNS上には“中国脅威論”を持ち出して米軍普天間飛行場の県内移設受け入れを迫るようなツイートがあふれる。

 島袋さんは「『即中国侵略』は飛躍しすぎでしょう。リスクで言うと中国の侵略よりも、海兵隊の事故リスク(ヘリ落下)などを恐れて反対しています」「むしろ住民が嫌がっているのに基地を建設する構造が『中共/チベット』のようになっていませんか。チベットの人に同情する気持ちをウチナーンチュにも向けて」と諭してきた。

 沖縄戦、戦後、日本復帰―。今回の県民投票にはこれまでの「歴史」が包含されると感じる。「無知や無関心のままでは簡単にデマにだまされてしまう。事実を基に本質的な議論ができる環境をつくれたら」。沖縄の未来を築くため、島袋さんの試行錯誤は続く。
 (県民投票取材班・松堂秀樹)