「軟弱地盤や高さ制限…何が問題?」 安全性に疑義 場所「不適」


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、大浦湾に軟弱地盤が存在することや構造物などの高さ制限に抵触することなどが、仲井真弘多元知事による埋め立て承認後に明らかになった。詳しく説明する。

 Q 軟弱地盤とは?

 A 非常に軟らかい海底地盤のことだ。試験用の棒を海底に差し込んで地盤の硬さを確かめる方法で調べる。75センチの高さから63・5キロの重りを落とし、棒を30センチ打ち込むのに必要な打撃回数を「N値」と呼ぶ。N値が少ないほど地盤が軟らかい。本来、大型構造物を造る際にはN値50以上が必要とされる。

 Q 大浦湾の軟弱地盤はどんな状態?

 A 大浦湾でN値がゼロの地点が多く見つかった。N値ゼロとは、打ち込まずに重りを置いただけで試験用の棒が沈んでいく状態だ。最も深い場所にある軟弱地盤は、水深約30メートルの海底から地下に約60メートルも続いていることが判明している。軟弱層の最深部は海面から深さ約90メートルにまで達していることになる。

 Q その状態で基地を建設できる?

 A そのまま埋め立てると、地盤沈下や液状化で建物が傾いたり地面に凹凸ができたりする恐れがある。政府は地盤の安定性を高める改良工事を追加する方針だ。

 Q どんな改良工事が必要?

 A 政府はまだ工事の詳細を正式に公表していないが、直径約1~2メートルの砂のくい約7万7千本を大浦湾に打ち込む大規模な工事を検討している。工事の長期化と費用の増大は避けられない。政府は一般的な工法で改良可能だと強調するが、国内にこれほどの深さを改良した事例はなく、軟弱層の最深部(海面から90メートル)に届く作業船もない。最大で深さ70メートルを施工できる船が2隻あるのみだ。

 Q 高さ制限の問題とは?

 A 航空機が安全に飛ぶため、空港や飛行場の周りでは構造物や地形が高すぎてはいけないという決まりがある。米軍の制限基準を辺野古の基地建設に当てはめると、標高54・52メートルを超える建物や山があってはいけないことになる。久辺小中学校や沖縄工業高等専門学校など公共施設のほか、家屋112軒、鉄塔13本、電柱・標識など233本が超過している。

 Q 政府の対応は?

 A 米国との話し合いでほとんど全てを「例外」として扱い、安全基準を当てはめないと決めた。地元には知らせない一方で、沖縄防衛局は沖縄電力や通信会社にこの問題を伝えていた。制限超えの鉄塔を政府負担で撤去する話を持ち掛けている。

 Q 軟弱地盤の問題も高さ制限の問題も、基地建設を始める前に分からなかったの?

 A 政府は高さ制限の問題を少なくとも2011年に発注した調査で認識していた。県に埋め立て承認を申請したのは13年で、高さ制限を調べた2年後だ。しかし、18年に報道されるまで公表しなかった。軟弱地盤の問題も、遅くとも16年までには非常に地盤が軟らかい地点は見つかっていたが、政府が軟弱地盤の存在を認めたのは19年に入ってからだ。いずれの問題も対処して工事を続けることは可能だと主張する。県は、これらの問題を根拠に辺野古が「新基地建設の場所に適さない」と指摘。法律で定められた埋め立て要件を満たしていないとして県の承認を撤回している。