基地なくなると沖縄経済は破綻する? → 跡地の経済効果は最大108倍


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 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り、政府は移設受け入れを条件に北部振興策などを図ってきたほか、沖縄振興予算は2013年の仲井真弘多知事(当時)が埋め立てを承認して以降、毎年3千億円超が計上されている。基地と経済に関する疑問を振り返る。

 Q 沖縄は予算をもらいすぎている?

 A 予算面で国から厚遇されているわけではない。国から県への財政移転(国庫支出金と地方交付税)は2016年度決算ベースで約7456億円。東日本大震災などの復興予算が多く投入された岩手、宮城、福島、熊本の4県を除いて全国12位だ。人口1人当たりの金額は52万円で、全国で5位。1972年の日本復帰後、一度も全国で1位になったことはない。

 Q 沖縄だけ特別に多額の振興予算が措置されている?

 A 道路や港湾、病院、学校の校舎などの整備や、農山漁村地域整備に必要な費用は他県では分野ごとに各省庁が個別に予算を計上している。沖縄関係予算は県と各省庁の間に内閣府沖縄担当部局が入り、各省庁の予算を総合的に調整し、予算を一括計上して財務省に要求する仕組みとなっている。そのため沖縄が別枠で多額の予算を受けていると誤解されやすくなっている。

 沖縄振興予算の枠組みができた背景には、復帰前まで米国統治下にあり、予算折衝などを経験していない沖縄への配慮がある。しかし、あくまで枠組みであって、他県と同様の交付金・補助金の枠組みに加えてさらに3千億円の予算が別途上乗せされているわけではない。沖縄関係予算には国土交通省や農林水産省などの公共事業や学校などの文教施設費、不発弾処理など戦後処理の関係費も一括計上されている。

 Q 沖縄の経済は基地に大きく依存している?

 A 1972年の日本復帰前に比べると、沖縄経済の基地関連収入(軍用地料、基地従業員所得、米軍等へのサービスの提供など)の割合は大幅に減っている。県民総所得に占める基地関連収入の割合は、70年度は30・4%だったが、72年度は15・5%、2014年度は5・7%(2462億円)まで低下している。基地関連収入が沖縄経済に与える影響は限定的だ。

 Q 米軍基地がなくなったら沖縄の経済に悪影響があるのでは?

 A 米軍基地が返還されたり、整理縮小されたりすれば、跡地利用を進めることができる。米軍牧港住宅地は新都心として、ハンビー飛行場は北谷町桑江・北前地区として返還後に発展を遂げた。県のまとめによると、返還地の直接経済効果を返還前と比べた場合、那覇新都心で32倍、那覇小禄金城地区で14倍、北谷町桑江・北前地区で108倍に上る。沖縄本島の14・7%の面積に現在も米軍専用施設が占有しており、返還されたら大きな発展が期待できる。

 Q 名護市辺野古のキャンプ・シュワブなど、基地の周辺に「基地の街」ができてにぎわった。

 A 復帰前の米軍関係者の収入は県民の数倍で、その購買力や消費力に当て込んで、他地域などから集まってきた人たちで「基地の街」が形成された。例えば、1965年当時で比較すると、琉球政府(現在の沖縄県庁)の主事クラスの職員の基本給月給は43ドル70セントだったのに対し、米軍で最も低い階級に当たる二等兵の基本月給は125ドル10セントで約3倍の差があった。

 しかし2019年現在は県庁職員の初任給は18万700円で、二等兵の基本月給1554ドル(17万2千円)より高くなっている。収入格差はほぼなく、基地内で買い物や飲食などを済ませる米軍関係者も多い。「基地の街」が復帰前のようににぎわう可能性は低そうだ。