沖縄からの「異議申し立て」に本土の国民1人1人はどう向き合うのか


社会
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投票率過半数超え、反対票4分の1以上の報道を聞き、拍手をする「辺野古」県民投票の会の元山仁士郎代表(前列左から5人目)と会員ら=24日夜、那覇市古島の教育福祉会館

<大型解説>

 辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票で、県民は戦後74年を経ても国内の米軍専用施設の7割が集中する現状に加えてさらに基地負担を背負わされることに「反対」の意思を示した。軟弱地盤の問題などで長期化が不可避となった工期や膨れ上がる予算について明確な説明を避けたまま、投票結果にかかわらず工事を継続して普天間の危険性を放置し続ける政府への批判が結果に反映されたとみられる。県民の選択は沖縄に寄り添わずに工事を強行する政府への「異議申し立て」として歴史に刻まれることになる。

 一方、県民投票の結果に法的拘束力はなく、国は引き続き工事を続けることを明言している。「反対」が投票資格者総数の過半数には届かなかったこともあり「『圧倒的民意』ではない」との声が政府内から上がっており、工事への影響は限定的だとの見方もある。

 確かに投票率は52・48%にとどまったものの、得票数を見ると「反対」が「賛成」を4倍近く上回った。投票を通じて政治に参加する意思のある県民の圧倒的多数が辺野古移設に「ノー」の意思を示した意味は大きい。

 工事の継続は、主権者をないがしろにし、安全保障にかかる負担を一地域に過剰に押し付ける専制国家的な印象を国内外に発信することになる。

 県民投票条例に基づき、玉城デニー知事は首相と米大統領に結果を通知するが、日本政府が工事を止める見通しは現時点ではない。県の試算で13年かかる辺野古新基地が完成しても、条件を満たさなければ普天間飛行場は返還されないことになっており、「危険性除去が原点だ」と強調する政府自身が宜野湾市民を危険にさらす矛盾が生じている。

 埋め立て反対票を投じた県民の多くは、沖縄に負担を集中させる「構造的差別」の解消を求めているに違いない。今後は日米政府の対応が焦点となるが、普天間の危険性除去と、さらなる負担となる新基地建設を中止する必要性をどう考えて沖縄県民に向き合うかが本土の国民一人一人にも問われている。
 (松堂秀樹)