政治

安倍首相、低姿勢も方針変えず 知事は辺野古3者協議提案、対応冷ややか

安倍晋三首相(右)と会談する玉城デニー沖縄県知事=1日午後、首相官邸

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設に伴う新基地建設を巡り、玉城デニー知事は1日、県民投票で示された「反対」の民意を背に、日米両政府に辺野古の政策見直しを求めた。ただ玉城知事がこれまでの日米両政府によるSACO(沖縄に関する特別行動委員会)に沖縄を加えた新たな協議の場として提案した「SACWO」の創設について両政府の対応はゼロ回答に終わった。沖縄が突き付けた異議申し立てをどのようにして「真摯(しんし)に受け止める」(安倍晋三首相)のか、ボールを投げられた政府の今後の対応が焦点となる。

 「辺野古埋め立てに絞った県民投票によって辺野古移設断念を求める県民の民意が初めて明確にされたことは極めて重要な意義がある」

 玉城知事は1日、就任後3度目となった首相との会談でこう強調し、政府が米軍普天間飛行場の辺野古移設の根拠としてきたSACO合意という固定観念からの脱却を訴え掛けた。

 玉城知事は新たに提案したSACWOについて普天間飛行場の辺野古移設などを確認した1996年のSACO合意以降の約23年の進捗(しんちょく)を確認し、基地返還について検証する「セカンドステージ(第2段階)」と位置付ける。根強い反対の民意により辺野古移設が実現困難であることを踏まえ、日米に代替策の検討を促す狙いだ。玉城氏が提案に踏み切った背景について県幹部は「政府は辺野古が嫌なら対案を示せというが、計画は日米で決めたもので、その判断主体に県は入っていない。県も決める立場に入れるべきだ」と解説した。

 県民投票で「反対」の民意が示された翌日の2月25日も、菅義偉官房長官は玉城氏が普天間飛行場の危険性を除去する手法について言及していないとし「極めて残念だ。ぜひ知事の考えを伺ってみたい」と語っていた。こうした政府の姿勢に対して玉城知事が突き付けた一つの答えが、SACWO構想だったと言える。

 ただ、提案については県庁内で具体的な検討が水面下で進んできたわけではなく、県の担当者は「知事の頭の中にしかない」と口をそろえる。県幹部は「まずは政府の回答次第だ」と語った。

 1日に玉城知事と会談した首相は「辺野古移設」や「唯一の解決策」などの用語は直接使わず、慎重な物言いに終始したという。だが県が問題視する辺野古埋め立て海域の軟弱地盤やサンゴの移植などについての政府の対応状況を説明するなど、低姿勢を演出しつつも政府の移設方針が変わらないことをにおわせた。

 関係者によると、玉城氏のSACWO構想は事前の会談調整で官邸側に伝えられていなかったといい、会談で首相からも具体的な返答はなかった。ただ野上浩太郎官房副長官はその後の記者会見で、日米と沖縄による3者協議開催を求める玉城知事の提案について「米国政府との交渉は、政府がわが国を代表して行うべきものと考えている」と否定的な見方を示した。

 防衛省幹部も「SACOやその後の米軍再編で沖縄との交渉は日本政府が担ってきた。3者協議をする意味は何なのか」と提案をいぶかった。提案に対し政府側の積極姿勢はうかがえず、先行きは不透明だ。

 会談後の1日夜の衆院財務金融委員会で首相はこう答弁した。「普天間の危険性を根本的に除去するためには、一日も早く辺野古への移設を進めていくことが必要になる」

 玉城知事の新たな提案に対し、県政与野党内にはさまざまな臆測が広がる。

 県民投票翌日の2月25日に結果を「真摯に受け止める」との声明を発表した自民党県連内には「県民投票の結果には法的拘束力がない。工事が止まる可能性は低く、新たな協議体が設置されても意味がない」(幹部)との声が強い。

 一方、与党内からは「知事は常に対話を求めており、政府は新たな協議会の設置に応じるべきだ」との声が大勢を占める。ただ与党幹部の多くが知事の提案を「初めて聞いた」と驚きをもって受け止めており、「事前に共有すべきだ」と不満も漏れた。 (當山幸都、明真南斗、吉田健一)