人気名物店がまた閉店 そばも気持ちも〝山盛り〟 沖縄・那覇通堂「波布食堂」歴史に幕


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記者に「カメカメー攻撃」する仲村渠梨枝子店主=7日、那覇市「お食事処波布」

 山盛りのウチナー料理が味わえる店として沖縄県民や観光客などに愛されている那覇市通堂町の「波布(はぶ)食堂」が、28日で27年の歴史に幕を下ろす。

 うわさを聞きつけた常連客や観光客が、店の味を記憶と記録に残そうとスマートフォンを片手に連日お店に押し寄せている。

 空席を待つ列が外まで続く昼時、箸を指す場所が見当たらないほど野菜炒めが積み上げられた名物「肉そば」(税込み750円)がテーブルに置かれた。「いただきます」より先にお客さんから「すごい」「やばい」との悲鳴にも似た声が上がる。調理場で鍋を振るう店主の仲村渠梨枝子さん(67)は「大盛りの理由は無い。少ないより多い方がいいさ。あえて言うなら気持ち」と笑う。

山盛りの名物「肉そば」

 仲村渠さんは伊平屋村出身。92年、那覇埠頭に「お食事処(どころ)波布」を開店し「いつの間にか波布食堂って呼ばれるようになった」。朝6時半から仕込みを始め、午前11時の開店と同時に流れ作業で次々と山盛りのチャンプルーが湯気を上げる。午後6時すぎの片付けまで2人の妹たちと調理場に立ち続ける。目の回る忙しさの中、お弁当待ちの客にもそばを差し出す「カメカメー攻撃」を忘れない。

 「最近孫ができたからゆっくりしたい」。閉店の理由を話す梨枝子さんは「常連客は家族のよう。お客さんにさみしくなると言われて後ろ髪を引かれる思い。良いお客さんに恵まれた」と言う。調理場の薄くなったまな板が27年間の慌ただしさを物語っている。

 「店を辞めてからさみしくなるはず。そしたら孫にカメカメーするさ」と笑顔を見せる梨枝子さん。最終日までどんぶりいっぱい感謝の気持ちを載せる。
 (高辻浩之)