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J2元年開幕3連勝のFC琉球 チーム躍進の鍵は「純県産」ストライカー・上門知樹 「男手一つで育ててくれた父、地元沖縄のために」

 サッカーのFC琉球がJ2参戦元年、開幕3連勝と好スタートを切った。同リーグでの昇格チームの開幕からの連勝は初めて。3試合で9得点は他を引き離してトップに立つ。この破壊力ある攻撃陣を支える一人がFW上門知樹(21歳、うるま市出身、与勝高出)だ。166センチと小柄だが、補って余りある走力とゴールへの「嗅覚」を生かし、ここ2試合とも1ゴールずつ決め、チームの躍進に不可欠な存在となっている。入団後の3年間はプロのレベルの高さにもがいた。磨いてきた技術がやっと開花し始めた今季。男手一つで育ててくれた父・幸重さん(51)や家族、地元沖縄のため、「勝負の年」に輝きを狙う。 (喜屋武研伍)

◆鋭い嗅覚 ゴール連発 家族、地元沖縄のため


第3節の愛媛戦で、相手DFのトラップミスに素早く反応し、ボールを奪う上門知樹(右)=10日、沖縄市のタピックひやごんスタジアム

 小学3年のころ、兄が出場したサッカー大会を観戦したことが競技を始めたきっかけだった。めきめきと力をつけ、中学、高校時代は飛び抜けた選手に。だが実力的に競り合う相手が少なく、本気で練習に取り組まなかった時期もあると振り返る。「恥ずかしくて、当時の試合は見ることができない」と苦笑する。

■何もできない日々

 選手権県予選決勝を見ていた金鍾成氏(前FC琉球監督)に技術を認められ、オファーを受けた。しかし、当時は既に調理師を目指し専門学校への進学を決めていた。J3では安定した収入が見込めないとして、入団には後ろ向きだった。そんな中、父の幸重さんが「誰でもできることじゃない。やってみては」と背中を押した。上門が幼い頃に両親は離婚。経済的に余裕がある訳ではなかったが、サッカーについて上門は、不満を感じることなく打ち込めていた。

 周囲の支えもあり、プロへ進む決断をし、高校卒業後に入団した。しかし、甘い世界ではなかった。体格、技術的にも全て周囲が上。1年目は8試合出場で、放ったシュートは2本のみ。「何もできない」。自信はあっさりと崩れ去り、「いつ球団に切られるか」と恐怖にかられながら、練習していた。

 練習を怠けたがる中高時代の姿はなく、限られた時間で必死に走り込み、チームメートにも積極的に話し掛けた。2年目も9試合出場にとどまったが、3年目の昨季、これまでの努力が実を結び、開幕戦でJ初ゴールを上げた。勢いに乗りかけたが、再び壁にぶつかり、2戦目以降は試合に出てもなかなか得点を決めることができなかった。


愛媛戦で相手DFからボールを奪った後、左足を振り抜いてゴールを決める上門知樹(右)

■飛躍の4年目

 チームは今季、J2の新たなステージに進んだ。昨年から半数以上が入れ替わり新体制となる中、上門はチームに残った。自信と課題を感じた昨季。入団4年目の今季は自身にとっても「勝負の年」と位置付け、心機一転を図り、新入団選手ともピッチ内外で細かくやり取りし、信頼関係を築いてきた。

 チームメートと意思疎通が図られたことで、持ち前のスピードに、チームとして動く判断力やボールへの反応の速さなどが加わり、攻撃陣の一枚として期待されていった。待望の今季1点目は第2節の大宮戦。中央から中川風希のスルーパスに反応して鮮やかに押し込んだ。2点目の愛媛戦はホームではおなじみの強風の中の一発だった。ボールの軌道、選手とボールの距離感、そして風から、相手DFのトラップミスを予測し、素早くカットし、そのまま左足を振り抜いた。

 2点とも琉球で3年間積み上げた地道な練習から生まれたものだった。試合後、スタンドから送られた父・幸重さんの「ナイス!」の言葉は、今も耳に残り離れないという。まだ始まったばかりの厳しいJ2だが、「2桁得点を目指す。去年のようにはならない」と今後もゴールネットを揺らしていく。