地域おこし協力隊終え 粟国でパン屋開業へ 島産小麦、塩使い「恩返し」


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 【粟国】2016年に粟国村地域おこし協力隊として粟国島に赴任し、3月末で任期を終える宮本真理さん(42)が、島内の空き家を改装し、軽食も提供するパン屋としての開業準備を進めている。土産品の開発や島のPRに全力投球してきた3年間。「頑張れたのは島の皆さまのおかげ。お世話になった人たちに恩返ししたい」と話す。今後は観光客と村民それぞれの満足度向上を目指す。

手作りの麦食パンを買い求める村民の上地松恵さん(右)に、笑顔でパンを売る宮本真理さん=13日、粟国村の特産物直売所「とび吉」

 東京都で生まれ、埼玉県で育った宮本さんは自称「島マニア」だ。県内離島のほぼ全てを訪れ、「住むならここ」と決めたのが粟国島だった。

 初来島から3年後、(1)島の知名度向上(2)来島者増加(3)移住者増加(4)村民の満足度向上―を目標に地域おこし協力隊として赴任した。

 これまで土産品の数を増やそうと、「粟國の塩」を使った「塩サイダーキャンディ」や、島のもちきびを麺に練り込んだ「もちきび麺」などを開発。飲食店の魅力化や観光商品開発、メディアへのPRなどに精力的に取り組んだ。

 協力隊の任期は3年間。漠然と定住を考えていた1年目に「定住するなら開業したい」との思いが芽生え「食品衛生責任者」の資格を取得した。

 島で何か作れないかと考えた時、島で麦が栽培されていることを知った。もともとパンが好きだったが島にパン屋はなく、自身を含めて多くの村民が焼きたてパンを食べたがっていた。

 「パンを作ろう」。島の麦を使い、ホームベーカリーで食パンを焼いた。昨年5月からは村の特産物直売所「とび吉」で週に1度、パンを売り始めた。島の全粒粉約4割と「粟國の塩」を使用した麦食パンは売り切れるほど人気だ。

宮本真理さんの活動報告会に集まった村民ら=12日、粟国村の東ふれあいセンター

 12日に村内で開かれた宮本さんの活動報告会には、村民約50人が足を運んだ。

 村民の上地松恵さん(74)は「焼きたてのパンを食べられるなんて幸せ」とうれしそう。報告会にも足を運び「意志を固めて粟国に向き合ってくれる。真理さんは島の宝」と話した。

 5月にも開店する予定。プロ野球広島カープの大ファンでもあり、昼はパンや軽食、夜はスポーツ観戦できるバーにする考えだ。

 「飲食店が少ない島で、村民と観光客両方のニーズに応えたい。行事の日にも開店し、観光客が行き場を失わないようにする」。協力隊の経験で見えた課題の解決にもつなげる考えだ。「粟国が好きだから。理由はそれだけ。最低でも10年は頑張りたい」と目を輝かせた。(半嶺わかな)