〈立候補予定者に聞く〉屋良朝博氏(下) 産業構造 改革し貧困解消


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21日投開票の衆院沖縄3区補欠選挙に向けて琉球新報が2日までに実施した立候補予定者へのインタビューでは、9条を含めた憲法改正を巡って賛否が分かれたほか、争点の一つである子どもの貧困対策についても解消に向けた手法に違いがみられた。(聞き手・吉田健一)


 

屋良 朝博氏

―現行の沖縄振興特別措置法の必要性や次期沖縄振興計画について。

 「沖縄振興特別措置法は、米国統治下の27年間をカバーするために始まったが、今は惰性で続いている。振興計画の内容が沖縄の産業構造を変えるインパクトを与えるものか検証しないといけない。とりわけ、公共工事偏重の仕組みを変えないといけない」

 「振興計画の利点は国から予算を取ることに慣れていなかった県政が内閣府を足掛かりに予算を一括計上できる便利さがあった。それが今本当に必要なのか。一括計上しなくても各省庁の補助対象メニューから引っ張ればいい。ハード面に偏重するとソフト部門である教育や社会福祉などの補助費を削ってしまう流れがある。人に対する投資が手薄になる制度設計になっている。見直して人材育成など必要な人に必要なケアが行き届く行政サービスにしていかないといけない」

 「沖縄は離島県としての不利性を克服しないと生活レベルが上がらない。振興策の新たな展開を求めるべきだ。海外の都市と直結すれば沖縄は強くなる。沖縄で製品を造ればメード・イン・ジャパンとなる。中国の提唱する巨大経済圏構想『一帯一路』に乗れば、市場は世界に広がる」

―子どもの貧困対策について具体的な解消策は。

 「まずは県政が陣頭指揮を執り、市町村と連携するのが順当な在り方だ。子どもの貧困は家庭の貧困であり、家庭の所得を上げる努力が必要不可欠だ。沖縄における産業構造を変えないとどうしようもない」

―医師不足や若者流出など北部の振興について。

 「北部の基幹病院の問題があるが、玉城県政が調整中なので、市町村の負担分がどれだけになるのか注視している。経営が赤字体質なのも問題だ。運営に工夫があってもいい。医師不足解消に向けて国の医師確保事業費などがあるので、それを使って医師の確保に努力する。琉球大医学部など大学の研修医制度を受け入れる態勢をつくるなどの工夫も必要だ」

―憲法9条を含めた憲法改正について。

 「今、議論されている改憲論は9条の中に『一生懸命に頑張っている』自衛隊を明記するかどうかで、感情論が先行している。感情論で大事な憲法を変えてほしくない」

―交通渋滞解消を含めた交通政策について。

 「鉄軌道は整備すべきだ。ただ縦貫道は厳しいため、LRT(次世代型路面電車)を環状型に整備し、地域間で回す。さらに、北部と中部を連結することができれば大量輸送が可能となる。交通渋滞の大きな要因として米軍基地の存在もある。基地を減らす努力もしないといけない」

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 やら・ともひろ 1962年8月22日生まれ。北谷町出身。フィリピン国立大卒。沖縄タイムス社に入社し、基地問題などを担当し、社会部長などを歴任。2012年に退職し、現在は民間シンクタンク「新外交イニシアチブ」の評議員を務める。