「やればできる」 義足の男性がスイム初挑戦へ 仲間と共に石垣トライアスロン


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石垣島トライアスロンに出場する結城和昭さん=18日、南城市奥武島

 17歳の時に交通事故で左足の太ももから下を失い、義足になった結城和昭さん(38)=福島県出身、宜野湾市在住=が、21日に石垣市で行われる「石垣島トライアスロン大会2019」(同実行委員会主催、琉球新報社など共催)で、初めてトライアスロンのスイムに挑戦する。トライアスロンはリレー形式で、両足義足のランナーで知られる島袋勉さん(55)がバイク40キロを担当し、下半身まひの障がいを抱える赤嶺政則さん(56)が日常用の車いすでラン10キロを走る。英語で「できる」という意味の「CAN」をチーム名に冠して、健常者と同じコースの完走を目指す。

 結城さんはこれまで、50メートルと100メートルの競泳で九州障がい者水泳選手権大会や日本身体障がい者選手権大会などに出場してきた。2016年の日本身体障がい者選手権大会では100メートル自由形で銅メダルも獲得しているが、今回挑戦する1・5キロに及ぶ長距離のスイムについては「高い壁だった。自分一人では絶対に挑戦しようと思わなかった」と話す。

 挑戦のきっかけをつくったのは病気で胸から下が動かない障がいを抱えながらも、県内や県外で数々のトライアスロンの大会に挑んできた赤嶺さんだ。「結城さんならできる」という赤嶺さんの言葉に背中を押された。

(左から)バイク担当の島袋勉さん、車いすラン担当の赤嶺政則さん

 結城さんは昨年11月ごろから、週に3回ほどのペースで練習を重ねてきた。はじめは競泳との違いに苦労の連続だった。自由形の100メートルの場合は、1分ほどで競技が終わる。だが1・5キロのスイムは、波や風の抵抗がある中で30分近く泳ぐことになる。海の過酷な環境に加えて、これまで経験したことのない長さに戸惑い、「はじめは苦痛しかなかった」と振り返る。だが練習を積み重ね、大会に向けてコンディションを整えてきた。

 結城さんは今大会の目標を「まずは完泳」と挙げた。「一番最初のスイムを泳ぎ切らないと、島袋さんと赤嶺さんにつなげない。プレッシャーはあるけど、だからこそ頑張れる」と笑顔を見せた。

 島袋さんは「トライアスロンへの参加を通じて、障がいの有無に関わらず、皆で一緒にスポーツを楽しめるような社会の実現を目指したい」と大会への出場の目的を語った。

 結城さんをトライアスロンに誘った赤嶺さんは「障がい者でも、補い合えば健常者と同じ土俵でトライアスロンが楽しめる。やればできるということを多くの方に伝えられれば」と話した。
 (嶋岡すみれ)