「辺野古反対の岩盤固かった…」 創価学会婦人部に根強い〝島尻氏アレルギー〟 県民投票対応も影響か 島尻陣営 衆院3区補選の舞台裏(上)


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島尻安伊子氏(左から2人目)の応援のため街頭でマイクを握る公明党の斉藤鉄夫幹事長(同3人目)ら=14日、沖縄市の胡屋十字路

 衆院沖縄3区補欠選挙投開票日の1週間前、島尻安伊子氏の携帯電話が鳴った。菅義偉官房長官からだ。「死にものぐるいで頑張れば勝てる」。安倍政権ナンバー2の菅氏は参院議員2期目だった島尻氏を沖縄担当相に登用した人物とされ、島尻氏が3年前の参院選で落選した後も大臣補佐官として重用していた。今回の補選でも沖縄入りし、地方議員や経済界の引き締めに奔走した。

 昨年9月の知事選では菅氏が街頭演説に立ち、大勢の国会議員が応援で沖縄入りした。これを自民党県連は「官邸主導で行われた」と総括した。その認識を踏襲した島尻選対は地元首長や県議、市町村議員を前面に出す戦略を展開した。

 自民党本部が国会議員を沖縄に送る際には、企業への日程調整など全てを「自己完結」できる政治家だけを沖縄に派遣するよう注文した。結果、来県した議員は政権幹部を除き、さまざまな業界に顔が利く全国比例の参院議員が中心となり派遣議員は限定された。

 また「演説が得意ではない」(陣営関係者)島尻氏のスポット演説は選挙戦最終盤まで制限し、企業の朝礼、模合などの会合回りを徹底するなど旧来型の選挙手法を採用した。だが米軍普天間飛行場の県外移設を公約に掲げ、後に撤回した経緯や閣僚時代の失言などで生じた不信感から選挙戦序盤から劣勢が伝えられていた。告示後の集会でも3年前の参院選と同様に「波高しと言われているが必ず乗り越える」と訴えたが、荒波を越えることはできなかった。

 友党公明党の支持母体である創価学会の動きも鈍かった。14日のラストサンデーには公明党の斉藤鉄夫幹事長が来県し、島尻氏と共に沖縄市の胡屋十字路などで街頭に立ったが、動員がなかったこともあり、聴衆は十数人にとどまった。自民関係者は「学会でも特に婦人部は辺野古移設容認の島尻氏に対するアレルギーは根強い。特に沖縄の婦人部は党が号令を掛けても応じない。実際、この選挙の学会の熱量は低かった」と恨み節を口にした。

 一方、選対内には自民党県連に対する不満も渦巻く。県民投票に対する県連対応で自民支持者から反発を招いたとの見方がある。陣営関係者の一人は「県民投票をやること自体は悪くない。ただ全県実施の過程で明確な方針もないまま県連が追い詰められ、渋々県民投票に同意した。その過程に支持者が反発し、離れた」と指摘する。

 県知事選、県民投票と同様に普天間飛行場の名護市辺野古移設の是非が問われた今回の補選は、移設に反対する有権者の意思が改めて示された。県連関係者は「投票率はあれだけ下がっても約6万票は獲得した。基礎票は固めており、辺野古『容認』で票は逃げていない。辺野古反対の民意という岩盤が予想以上に固かっただけだ」とつぶやいた。別の関係者は「前回衆院選より惜敗率は高い。次の衆院選につながる結果だった」と総括した。

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 平成最後の国政選挙となった衆院沖縄3区補選は、無所属新人でフリージャーナリストの屋良朝博氏が元沖縄北方相で新人の島尻安伊子氏を破った。夏の参院選の前哨戦として全国的な注目を集めた中、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する民意が改めて示された。揺るがない民意の背景や選挙戦の舞台裏を探る。
 (衆院補選取材班)