2018年度の県内入域観光客数は999万9千万人となり、1千万人の大台にあと千人と迫った。当初は現実離れした目標とも思われていた1千万という数字が一気に現実となり、沖縄観光が新たな局面を迎えたことを印象付けた。
復帰後の沖縄観光を振り返ると、1975年の沖縄国際海洋博覧会をきっかけに、これまで沖縄戦の慰霊訪問や戦跡巡りが中心だったのが、ビーチリゾート地として注目を集めるようになった。主要先進諸国の首脳が沖縄に一堂に会した2000年の九州・沖縄サミットでMICEの開催地としても関心が高まった。
年間の入域観光客数が570万人台だった06年に、経済界出身の仲井真弘多知事(当時)は「10年後の観光入域客数を1千万人にする」と公約に掲げた。
当時、県観光政策課に勤務していた嘉手苅孝夫前文化観光スポーツ部長は「当時は1千万人と言われてもピンと来なかった。数も上げ下げがあり、望みは厳しいと思った」と振り返る。
01年の米中枢同時多発テロで米軍基地のある沖縄への修学旅行が敬遠されるといった事態や、08年のリーマンショックによる景気悪化、翌年の新型インフルエンザ流行など、観光客数、観光収入は浮き沈みを繰り返してきた。
国内客も増加を続けるが日本全体で人口減少する中で、年々存在感を増したのが外国人客だった。11年に政府は沖縄の観光振興の一環として、沖縄を訪れる中国人観光客向けに数次ビザ(査証)の発給を認め、外国人観光客の増加に寄与していく。12年の一括交付金の創設は沖縄の観光プロモーション活動を促し、海外路線の便数も伸び始める。
円安により海外から買い物で日本を訪れる旅行需要が増え、沖縄の観光客数も600万人を突破。翌年14年には700万人を突入し、右肩上がりを続ける。いわゆる「爆買い」の光景が沖縄でも日常化したのがこの時期だった。
14年は消費税率が5%から8%に上がったが、沖縄の観光客数は前年度比9%増、観光客1人あたりの消費額も9・5%増と影響を見せなかった。今年10月には消費税率10%へ引き上げが予定されるが、玉城デニー知事は「外国人観光客増加の勢いを維持できれば大きな影響はないと見ている」と話した。
とはいえ、1人あたり県民所得は依然全国最下位。県の意識調査で「観光が生活の豊かさにつながると思うか」との質問に「思う」と答える割合が3割にとどまるなど、観光客の伸びに反して県民の満足度の低さが浮かび上がっている。
(中村優希)