イオンVSサンエーパルコ 沖縄で繰り広げられる「最大規模」をめぐる競争 それぞれの戦略は?


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(左から)イオンモール沖縄ライカム、サンエー浦添西海岸パルコシティ

 大型連休前の4月26日に約8千平方メートルを増床しリニューアルオープンした沖縄県北中城村のイオンモール沖縄ライカムが、店舗面積約8万6千平方メートルと県内最大をさらに広げた。これに対し6月27日の開業を発表したサンエー浦添西海岸パルコシティは約6万平方メートルだが、入居店舗数で250店とイオンモールを上回る。超大型ショッピングモールが並立して県内最大規模を競い合う状況は沖縄の市場環境のかつてない好調さを反映しているが、中南部商圏の過当競争や採用難に拍車が掛かることへの懸念も広がっている。

 沖縄ライカムはファストファッションや生活雑貨を扱う店舗を増床エリアにそろえたほか、体験型のスポーツテーマパークも新たに導入した。沖縄ライカムの佐藤規正ゼネラルマネージャー(GM)は「お客さまの要望が多い店舗を誘致した。一日を楽しく過ごせる商業施設を目指した」と強調する。

 パルコシティは沖縄初出店のテナント94店舗をはじめ、県産商品がそろう沖縄ゾーンを設置し、国内でも最新鋭の複合型映画館「ユナイテッド・シネマ」などが展開する。サンエーパルコの上地文勝社長は「全方位型のテナント構成ができた。浦添西海岸らしい楽しさを演出する商業施設にしたい」と力を込めた。

 近接した大型商業施設の立地について、沖縄国際大学経済学部の宮城和宏教授(地域経済分析)は「お互いに生き残るためには、異なる客層にターゲットを絞りながら差別化することが求められる」と指摘する。その上で沖縄を訪れる観光客が増加する現状に触れて「パイの奪い合いになることはなく、すみ分けも可能なはずだ」と分析を示す。

 2020年3月の那覇空港第2滑走路の供用開始を控え、那覇港には新たなクルーズ船専用岸壁の整備も予定されるなど、特に外国人観光客は今後も大きな伸びが予想される。

 両施設共に外国語表記の案内板や免税対応カウンターの設置など、外国人客の受け入れ体制を強化している。

 上地社長は「過去に例がないほど観光客の増加が見込まれ、消費はまだまだ拡大する」と見ている。

 佐藤GMは「外国人客の皆さまが快適に買い物を楽しめる環境を、これからも整える必要がある」と述べた。

 それでも県内の小売関係者は「拡大競争だけを続けていたらいずれは限界が来る。新規店舗はいいかもしれないが、既存店は少なからず影響を受けるはずだ」と述べ、既存の中小規模の事業者に影響が出ることへの危機感を隠さない。

 また人手不足が深刻な現状で、飲食店経営者は「観光客が来るからといって大型店を造っても、働く人はどこから連れてくるのか。ホテルやコンビニも次々建ち、人の奪い合いになっている」ともらした。
 (平安太一)