来年の東京オリンピックに當銘孝仁(沖水高―大正大出、新潟県・三条市スポーツ協会)、大城海輝(沖水高―鹿屋体育大出、三重県体協)の出場が有力視されているカヌー競技。糸満市の報得川では周囲の選手に比べて一回り小柄な平良一喜(13)=伊良波中2年、豊見城市=が高校生と共に汗を流している。カヌーでは県内唯一の中学生選手として先輩らと練習に励む平良は「世界大会やオリンピックに出たい。その前にまずは全国で1位になりたい」と瞳を輝かせる。
◇かっこいい
平良がカヌーを知ったのは幼稚園生のころ。沖縄水産高校のカヌー部監督を務める父の祐喜さん(41)が平良を練習や大会に連れて行ったこともあり、自然と競技に触れた。父と全国高校総体に行くこともあり、先輩の活躍をじかに見てきた。當銘や大城らが獲得したメダルを首にかけてもらうこともあった。祐喜さんは「銅メダルだと(平良が)『金色のがいい』と言ってましたよ」と懐かしそうに振り返った。
競技に触れるに従い、平良は「身長の何倍もあるカヌーをこいで、水しぶきがはねるのがかっこいい」と魅力を感じるようになった。小学2年からスタミナの強化と水に慣れるために水泳を始めたが、小学6年生の春休みから本格的にカヌー競技に取り組んだ。
◇試練の連続
當銘や大城にあこがれて立膝の姿勢で行うカナディアンを始めた平良。バランスをとるのが難しく、何度も水の中に落ちた。かっこよくカヌーをこぐ高校生を横目にバランスのとれない平良。「ずっと落ちていてやめようと思った。でもお父さんが応援してくれたからやめなかった」。祐喜さんの指導もあり、1カ月では乗れるようになった。
148センチと小柄だが、高校生とほぼ同じ練習メニューをこなす。高校生より前の位置でスタート。「追い抜かされないように必死」と言いながらも懸命にパドルを水中に突き刺す。練習では1日に約15キロカヌーをこぎ、家に帰っても筋トレに励んでいる。
◇照準は世界
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めきめきと実力をつけた平良は2、3年生の選手ばかりの昨年の全国大会で1年生にして7位に入った。それでも「納得いかない。メダルがとりたかった」と悔しがる。平良が現在、欲しているのは県内での中学生のライバルだ。祐喜さんも小・中学生が練習に来ればぜひ指導したいという。「ペアなどもやってみたいし、ライバルがいた方が面白い」。切磋琢磨(せっさたくま)する仲間の存在にあこがれている。
東京五輪が1年後と迫り、日本代表争いも熾烈(しれつ)だ。當銘や大城が出場を決めたら、実際の会場で見たいという。真剣に練習に取り組む様子に祐喜さんは「本人が嫌々、やっていないからいい。高校で活躍できるようにさせたい」と描く。日々上達する平良は「カヌーで金メダルをとってお父さんやお母さん、家族を喜ばせたい」と生き生きとした表情で語る。さらに「當銘先輩や大城先輩のように世界で勝負できる選手になりたい。世界大会やオリンピックでメダルを取ってみたい」とその先の世界舞台での活躍も誓った。
(屋嘉部長将)