「沖縄への基地集中は本土が問題を見なくていいシステム」白井聡氏、柳沢協二氏ら「主権なき日本」問う 東アジア共同体研シンポ


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(右上から時計回りに)白井聡氏、柳沢協二氏、前泊博盛氏、山城博治氏

 「東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会」は5日、那覇市泉崎の琉球新報ホールで公開シンポジウム「日本の民主主義を問う―日本は本当に独立国家・民主国家なのか」(琉球新報社後援)を開催した。京都精華大専任講師の白井聡氏らが登壇し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設や日米地位協定の問題を中心に、日本が米国に対し自国の主権を確立できていない現状などを報告した。約400人が来場し、熱心に話を聞いた。

 白井氏は「沖縄に米軍基地を集中させ、本土で問題を見なくていいようなシステムを構築した。直接的原因だった朝鮮戦争が終わろうとしていることを、今の権力が嫌がっている」と指摘。「本土において民主主義は形骸化している。日本国の中で民主主義が機能しているのは沖縄だけではないか」と分析した。

 山城博治沖縄平和運動センター議長は、昭和天皇が米軍による沖縄の長期占領を望むと米側に伝えた1947年の「天皇メッセージ」について「沖縄切り捨てのメッセージが今なお私たちを縛り続けている。天皇家が沖縄に向き合って謝罪・撤回することを求めたい。沖縄から声を上げていこう」と提案した。辺野古ゲート前の抗議活動に参加を呼び掛ける歌を披露し、会場を沸かせた。

 元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は「国防のために民意を無視するというのは本末転倒だ」と指摘し「沖縄の地理的優位性や抑止力の論理は破綻している。武力による脅し以外の多様な選択肢があるべきだ」と語った。

 沖縄国際大の前泊博盛教授は普天間第二小米軍ヘリ窓落下事故に触れ「日本政府は米軍機を制限できず、子どもたちを避難させている。(同じ敗戦国の)ドイツやイタリアは駐留米軍に国内法を適用させ、主権を取り戻す運動をしている」と述べ、外国と対比し日本の主権確立の必要性を訴えた。

 冒頭で玉城デニー知事が来賓のあいさつをした。

登壇者の話を熱心に聞く来場者=5日、那覇市泉崎の琉球新報ホール

会場からも連帯の声 多嘉山・徳森氏 沖縄の現状世界へ

 東アジア共同体・沖縄(琉球)研究会が5日に催した公開シンポジウムでは、動画サイト「ユーチューブ」で基地問題について発信している多嘉山侑三氏と、9月の知事選で玉城デニー知事支援に奔走した徳森りま氏もマイクを握った。

 多嘉山氏は沖縄の基地問題に関するデマや事実誤認に対抗しようと、分かりやすく事実を伝える活動を続けている。

 シンポジウムでは1995年以降の普天間飛行場を巡る問題を振り返った。「県民の声がことごとく踏みにじられてきた。沖縄のことは沖縄が決める。そう声を上げ続けていこう」と呼び掛けた。

 徳森氏は知事選で10、20代の支援者が沖縄の将来を思い描きながら当事者として活動した経緯を紹介。「日本政府を飛び越え、沖縄から世界に平和を発信したい。他の地域で課題を抱えている人たちと手を取り合い、怒りのエネルギーをポジティブに変えて取り組みたい」と語った。