県内の建造物、劣化で過去には事故も… 対策には何が必要?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄は沖縄国際海洋博覧会が開催された1975年前後に、橋や道路などの公的建造物(インフラ)整備が急速に進んだ。近年は塗料で鉄を覆い、水分や酸素に触れないようにしてさびを防ぐ技術の開発が進むなど、塩害への対策が取られ始めている。だが70年代前後に建設された建造物は塩害対策をしないまま、厳しい塩害環境に長年さらされ、劣化や老朽化が著しくなっている。

 さらに70年代の建設ラッシュ時には除塩されていない海砂が使用されるなど、コンクリート自体が老朽化を速める原因となっている場合もある。

 県内では浦添市の中学校で教室天井のコンクリート片がはがれ落ち、生徒が負傷する事故(2002年)や国頭村辺野喜橋の崩落事故(09年)、浦添市内間のマンションの2階崩落事故(09年)など、海砂を使ったコンクリートや老朽化が原因とみられる事故が度々起きており、対策が急がれる。

 建造物の老朽化を避けることはできない。厳しい塩害環境にあり、建造物の劣化が急速に進む沖縄だからこそ、よりきめ細やかなメンテナンスが求められる。そのためにも自治体などに維持管理を任せるのではなく、日々道路や橋などの公的建造物を使っている市民も、小さな異変に目を配ることが必要だ。

 沖縄特有の塩害環境をチャンスに変える発想も可能だ。さびにくい部材など塩害に対応した技術開発により、新たな産業を生み出すこともできる。琉球大の下里哲弘教授は「沖縄と気候が似ている東南アジア諸国などに技術を輸出すれば、沖縄発のビジネスチャンスになる」と期待を示す。

 環境を逆手に取って技術開発を進めれば、強みになる。長期にわたって安心で安全な公的建造物を使うことができるよう、産学官民が連携して取り組みを加速させる必要がある。

 (嶋岡すみれ)