裁判員選任手続き、沖縄は出席5割未満 16~18年、全国下回る


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎

 21日に制度施行から丸10年を迎える裁判員裁判で、那覇地裁が実施した裁判員選任手続きへの出席率が全国値を大きく下回り、2016~18年の直近3年間は5割に満たないことが7日までに分かった。那覇地裁の統計から本紙が算出した。最高裁などによると、那覇地裁を含む全国60地裁・支部合計の出席率は70~80%台で推移し、15年から60%台に落ち込んだ。那覇地裁は50~60%で推移し、16年は43.5%まで下がった。

 そもそも期日への呼び出し状が到着せず出席が期待できない人も含まれているが、結果的に県内では欠席者が過半数となっている現状が浮き彫りになった。

 全国の選任手続き期日の出席率は制度開始の2009年が83.9%と最も高かった。一方、那覇地裁は全国比で24.3ポイント低い59.6%だった。最も高かったのは12年で68.1%と、同年は全国との差が8ポイントまで縮まったが、その後は15ポイント以上の差で低い水準となっている。

 出席率は全国的にも低下傾向で、最高裁の統計によると17年は63.9%に下落。18年は9月末の速報値で67.7%となった。那覇地裁だけを見ると、施行2年から4年目は60%台で推移。5年から7年目に再び50%台となり、8年目から40%台となった。

 制度施行からの累計出席率は全国値が18年9月末の速報段階で72.5%に対し、那覇地裁は18年末までで55.2%と大きく差が開いている。

 刑事訴訟法が専門の中野正剛沖縄国際大教授は「刑事裁判への理解不足がある。書類が届いても放置され開封すらされないという例を多く聞いている」と指摘。沖縄は離島県である上に中小企業が多く、参加をためらう環境下にあるとして「生活者の立場として職業裁判官とは違う配慮を根本的に加える必要があるのではないか」と分析した。「参加しやすい制度をつくるならもっと経験者の意見を聞くべきだ。そうすることで改善策が浮かんでくる。裁判所自身がもっと敷居を低くして謙虚になるべきだ」と提起した。
 (謝花史哲)