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私は大学の教員も務めているが、今年は1年生の少人数のクラスでは「ネットのデマについて」をテーマにしている。すると、子どもの頃からネットが当たり前だった学生たちは、そこでの情報に意外にシビアな目を持っていることがわかってきた。
「おもしろいなと感じるネタは疑ってみることにしている」「新聞に載っていないニュースを見たときは出どころをチェックする」「ちょっとでもおかしな情報は拡散しない」など、ネット情報を慎重に扱おうとする姿勢にこちらが感心するほどだ。
一方、若い頃は本や雑誌など活字に慣れ親しんできた世代はどうだろう。特に中年以降にネットに触れ、「これまで教えられてきたことはウソだった。真実を知った」と簡単にデマにだまされ、すっかり信じ込んだり他の人に拡散したりする人たちもいる。
学生たちに「どうすればデマを信用する人を減らせるか」と話し合ってもらった。すると、「スマホを取り上げるしかない」という極端なアイデアが出て多くの人が同意した。「大切なことは活字で調べ、顔を見て伝える。それを思い出してもらうしかないのではないでしょうか」という十代の若者の意見に、なんだか私まで恥ずかしい気持ちになってきた。
そしてそんな学生たちに本紙の「ファクトチェック」の試みを紹介すると、「こういうのをゴールデンタイムのテレビで流すべきだ」という声が上がった。私は心の中で「おお」と感嘆の声を上げた。ネットや情報とのつき合い方がわかっている世代は、なんだか期待できそう。これから彼らに沖縄の話も少しずつしていけそうだ。一方でデマに踊らされる中年世代はどうするという深刻な問題もあるが、若い学生たちに触れて、私は未来に希望も感じているのであった。
(香山リカ、精神科医・立教大教授)