好調の沖縄経済、持続発展のカギは? 「IT関連企業の誘致が有効」東京商工リサーチ社長・河原光雄氏 観光は地の利で高付加価値を


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 2018年の県内企業売上高は上位100社の合計で前年比5・1%増の2兆2371億2500万円と過去最高を更新し、好調ぶりを見せている。企業に関する調査や分析を専門とする東京商工リサーチの河原光雄社長に、県経済の展望や課題を聞いた。

(聞き手・外間愛也)

―沖縄の経済状況をどう見るか。

「日本全国も悪くはないが、沖縄の元気さは全国と比べてもいい状況だ。観光は突出しており、ホテル建設ラッシュや土地需要の高まりに伴う地価の高騰など、好景気時に見られる現象が起きている。インバウンドの多さも特徴的だ。以前ならハワイなどに行っていたアジアの富裕層が、距離的な近さやロケーションの良さから沖縄に行くという動きもあるのだろう」

「今後の展開として、まだまだ沖縄の認知度が広がっていないヨーロッパやオセアニアの国々を呼び込むことも重要になる。どのように開拓するかは課題だが、直行便を呼ぶためのプロモーション活動などは重要になるだろう。今後さらにインバウンドを伸ばすために、関係者がいかに知恵を出すかが求められる」
 

―地価高騰によるバブル化など県経済に悪影響を与える可能性もあるか。

「沖縄の地価の上昇率は全国でもトップだが、現時点でバブルというほどの状況ではない。過去のバブル期は全国で土地が投機の対象となり実体以上に地価の高騰が起きたが、そこまでは至っていないという印象だ。東京など都心部と比較して土地価格はまだ安く、投資対象になりやすい状況はあるため、加熱しすぎないか注意は必要だ」
 

―企業倒産の状況も低水準で推移している。

「倒産件数の少なさも経済状況の良さを示す指標になる。この低水準を維持しつつ観光関連産業を伸ばすことと、もう一つは情報通信産業をはじめとするインテリジェンス系の産業を伸ばすことが大切だ。離島県という土地柄もあるが、大規模工場を建てて大量生産をするよりITやAI、システムなどの企業誘致に取り組むことが有効だ。特区などの制度もあるが、さらなる拡充を国に求めていくことも必要だろう」
 

―さらなる経済発展のためには何が必要か。

「既成概念にとらわれず、独自の取り組みを進めることだと思う。地の利を生かすことは観光にも有効だ。中南米ではジャングルの中に自然と調和した長期滞在型のホテルがある。やんばるで世界遺産登録を目指す動きがあるが、ロケーションを生かす活用法を考える必要がある。『素晴らしいもの』『高付加価値のもの』を打ち出すことだ。各企業がそこを目指して経済活動に取り組めば、さらなる飛躍が見えてくるだろう」