【深掘り】最盛期に漁獲禁止…沖縄のクロマグロ漁はこれからどうなる?


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クロマグロの漁獲規制について漁業関係者らの質問が相次いだ沖縄海区漁業調整委員会=17日、県庁

 4月に始まった沖縄近海でのクロマグロ漁だが、国際的な資源管理の取り決めの中で定められた漁獲制限量に達し、漁最盛期の5月半ばで早くも今期の漁が終了した。県内のマグロ漁業者は「苦しいが我慢する時だ」と表だっての反発は見られないが、「漁獲可能量の枠を広げるよう県で取り組んでほしい」と行政への要望は根強い。ただ、毎年の日本の増枠要求が国際的に認められないなど、クロマグロ漁の規制は当面厳しい状況が続く見込みだ。

 県内の海洋資源や操業ルールなどを管理する「沖縄海区漁業調整委員会」が17日昼に県庁で開かれ、事務局の県水産課が本年度のクロマグロの漁獲状況を説明した。この席で県の担当者は「『ついにこの時が来たか』という思いだ」と、同日中にクロマグロの採捕停止の命令を出す見通しを明らかにした。

■周知徹底求める声

 4月1日から5月17日までのクロマグロの漁獲量(速報値)は、沖縄県に配分された漁獲可能量である「知事管理量」の94・56%となる107・8トンに達した。県は上限を超えないように漁獲可能量の残り5%分を「留保量」と定め、95%に達する可能性が高い場合に漁獲の停止命令を出すことを決めている。

 漁期である7月31日まで2カ月半も残す段階での停止命令となり、県担当者は「比較的高値でクロマグロが推移している中で、採捕停止になることは心苦しい。しっかり規定の枠を守った操業が行われるように事務管理に取り組んでいきたい」と話した。

 命令に従わずに漁獲した場合、3年以下の懲役か200万円以下の罰金が科される。海区漁業調整委員会の構成員である漁業関係者からは今後の見通しなどについて質問や要望が相次ぎ、漁業従事者や一般の釣り人へ十分に周知されるかを不安視する声もあった。

 県は「メールやファクスのほか漁船に向けた無線での周知も強化する」と回答した。

■資源回復

 漁獲可能量は資源の回復が見られれば増量される。沖縄県に配分された年間漁獲制限量である127・2トンを超えなければ、5%を上限として来年度の漁獲可能量に繰り越すことも認められている。

 逆に127・2トンの上限を超えると、次年度以降の県の漁獲可能量が減る可能性がある。これが、漁業従事者や遊漁船への周知など漁獲管理の徹底が叫ばれる背景となってる。

 県漁連の関係者によると、漁獲停止命令が出るのを見越して17日は朝から多くの漁船が今期最後の漁に繰り出していったという。

 県漁連の上原亀一会長は、例年であれば漁の最盛期に水揚げができなくなれば漁業従事者の収入面での影響は大きく、経営が圧迫されると予想する。その上で「クロマグロの資源が回復すれば漁獲量の枠も広がるだろう。期待してしばらくは我慢だ」と話した。

(石井恵理菜)