沖縄でも運転免許の自主返納が増加 池袋事故以前の5倍に


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 4月19日、東京・池袋で87歳の男性が運転する乗用車が暴走し県出身の女性と娘が巻き込まれ死亡した事故以降、県内で運転免許の自主返納が増加傾向にあることが18日までに県警への取材で分かった。返納者の多くは65歳以上の高齢者だ。県警によると、事故以前の返納者は1日6人程度だったが、事故の翌週は多い日で事故以前の5倍に当たる31人が返納申請した。

 1998年制定された運転免許の自主返納制度は、加齢による身体機能や認知機能の衰えで運転に不安のある人などが自主的に免許を返す制度。2009年に82人だった自主返納者は18年に3463人と42倍に増えた。19年は3月までの返納者は854人(暫定値)で4月の事故を受け返納者はさらに増える見込みだ。

 県警交通部は「運転に不安を感じている人は相談を寄せてほしい」と呼び掛けている。高齢ドライバーを巡っては年齢を理由に運転を危険視されることも多く、70歳以上に義務化された高齢者講習の予約が取りづらいなどの指摘もある。

 全国で事故や逆走などの報道が相次ぎ自主返納制度の認知が高まる中、車社会の沖縄では家族や近親者のサポートがないと返納にはつながらないと県警はみており、公共交通の割引拡充など自主返納につながる環境づくりを検討している。(高辻浩之)


◆沖縄でも運転免許の自主返納が増加 高齢者の移動不便、負担も…公共交通環境など課題

 「運転に自信はあるが何か起こってからでは遅い。万が一の事故を考えて決めた」と話す那覇市の渡嘉敷兼義さん(84)は15日、18歳で取得した運転免許を返納した。65年以上無事故だったというが、生活に欠かせなかった車も手放した。

窓口で運転免許の自主返納手続きをする男性=15日、豊見城市の県運転免許センター

 4月の東京・池袋の事故以降、豊見城市の県運転免許センターには自主返納者が連日訪れている。返納は専用窓口に免許証を持参し簡単な書類を記入する。身分証の代わりになる運転経歴証明書が必要な人は1100円を支払い、混雑していなければ約15分で証明書が交付される。体が不自由な人や入院中の人も委任状があれば代理で手続きできる。ただし、免許証が有効期限切れだと同証明書の申請はできない。

 返納手続きを終え「思っていたよりあっという間だったよ」と話す渡嘉敷さん。約半年前に脳梗塞を患い、医師や家族の勧めで運転免許の自主返納をしたが、返納後の生活には不安を感じている。ちょっとした買い物にも「500円の品を買いに出てタクシーに乗ると往復で千円かかる」。返納は生活の変化を余儀なくされ、特に公共交通が整わない環境での移動や生活の支援を必要とする高齢者には大きな決断になる。

 県警は免許返納者に公共交通や飲食店での割引など優遇措置を設けている。豊見城市の県運転免許センターは日曜も対応するなど、自主返納を受け付ける態勢の拡充に努めている。免許返納を考える人や高齢者のいる家族は、最寄りの警察署に相談を寄せてほしいとしている。(高辻浩之)