海外のファクトチェックは?各種メディアで浸透している米国、大学とマスコミが連携する韓国 「ファクトチェック」座談会【5】


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メーターによって事実かどうかを判断する韓国ソウル大ファクトチェックセンターのホームページ

 2018年9月の県知事選で琉球新報は地方紙としては初めてファクトチェック報道を開始し、ネット上を中心に拡散される偽情報や根拠不明の情報など「フェイクニュース」について、事実を検証した記事を掲載した。17日に開かれた座談会には、専門家やネットメディア、全国紙から有識者が集まり、本紙報道への評価や、ファクトチェックの今後の方向性について活発な議論を交わした。出席者らはそれぞれの立場から現実社会に影響を及ぼしているフェイクニュースに対応するメディアの姿勢、選挙報道におけるファクトチェックの意義について考えを語った。(文中敬称略)

(右から)瀬川至朗氏 古田大輔氏 倉重篤郎氏 滝本匠

参加者

瀬川至朗氏(早稲田大教授、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)」理事長)
古田大輔氏(ネットメディア「BuzzFeeD Japan(バズフィード・ジャパン)」創刊編集長)
倉重篤郎氏(元毎日新聞社政治部長)
滝本匠(琉球新報東京支社報道部長)

進行 島洋子(琉球新報報道本部長)

 島 ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)は4月、情報を9項目に分類する基準を打ち出した。他国と比較して国内のファクトチェックの状況はどうなっているのか。

「事実が誇張されている」「ミスリード」など八つの基準を示した「アフリカチェック」の基準(アフリカチェックのホームページより)

 瀬川 米国では政治言説を中心にしたファクトチェック専門の団体や、都市伝説を含めて広くやっているファクトチェックのサイトがある。米紙ワシントン・ポストもしっかりしたものをしているし、CNNもトランプ大統領が一般教書演説などをする時にはリアルタイムでファクトチェックをするなど、かなり浸透して進んでいる。

 韓国はソウル大学にファクトチェックセンターができ、大手メディア、ネットメディアも含めて入って大きなグループで記事をネット公開している。統一基準を作り「メーター」でファクトチェックを表す形でやっている。フィリピンなど政権がかなり言論に対して攻撃したり、政権の方がフェイクニュースを流したりするところがアジアにはあるので、そういう国々ではファクトチェックのセンターがきちっと機能している。

 日本は残念ながら、まだまだだ。バズフィードは積極的に取り組んできているし、朝日新聞も以前、政治の言説をファクトチェックしていた。琉球新報が本格的に去年の秋から取り組んでいることは画期的で、他のメディア、新聞社からも勉強させてほしいということで来る。その動きはFIJが期待していたことだ。FIJはメディアパートナーズという仕組みをつくって琉球新報も入っている。次の参院選などで、より大きな動きになっていくと期待している。

 FIJは情報の判定基準(レーティング)を設けた。世界には、さまざまな判定基準があり、一番単純なのは全国紙でやっていた○、×、△で示すやり方もある。あるいはメーター制で示しているところもある。アフリカでも「アフリカチェック」という機関が八つの基準を設けている。

 ファクトチェックって「どうやっていいか分からない」という意見がある。FIJは判定基準をつくる必要があるだろうということで正確から不正確、誤りと同時にミスリード、根拠不明、判定留保を含めた基準を打ち出した。多くのメディアにとっては分かりやすいのではないか。