
「ビッグデータ」と呼ばれるさまざまなデータを活用し、企業活動の改善につなげるデータ分析のスペシャリスト「データサイエンティスト」として第一線で活躍する県出身者がいる。琉球大工学部出身の大城信晃さん(34)は、ヤフーやLINE(ライン)などIT大手での勤務を経て独立し、昨年福岡でデータ分析会社「NOB DATA」を起業した。「一見つながりがないように見えるデータでも、関連性を見つけ出すことで多様な利活用が可能になる」とデータ分析の可能性を強調する。
大城さんは大学卒業後、2009年にヤフーに入社し、データ分析の経験を積んだ。15年に大学の同級生が立ち上げたIT系のベンチャー企業、17年にラインの子会社LINEFukuokaに転職し、18年9月に独立した。
過去の会社では大手中古車販売会社の販売データを分析し、車種や年式に応じて自動で最適な価格を付けるシステムの構築に携わった。
起業後は個別の分析依頼も受けつつ、企業が独自でデータ分析チームを立ち上げる際の支援をするなど、幅広く活動している。
データ分析やデータサイエンスの分野は、日本では2010年代に入って広まった新しい職種だ。通信機器やネットサービスの普及で集積可能なデータが急増し、12年ごろにビッグデータという言葉が使われだした。ビッグデータをビジネスに活用する知見を持つ人材がデータサイエンティストと呼ばれる。
大城さんは「データサイエンティストはビジネス課題を整理する力、膨大なデータを整理する技術者としての力、統計学やAI(人工知能)の技術を活用して解決策を導く力が求められる。どうすればデータを有効に利用できるかという『気付き』が大切だ」と語る。
例として電力会社と宅配会社の持つデータを挙げ「電気メーターが動いている時間は住人が自宅にいるという共通点を見いだすと、そのデータを使えば再配達を減らせるという結論が導ける」と紹介した。
電力使用のデータは、顧客情報が特定できない形にした上で解放する案が経済産業省で検討されている。
大城さんは「将来的にはデータサイエンティストのネットワークを広げ、必要とする会社に必要とする分析者をつなげる仕組みを構築したい。データ活用によって、企業も個人もみんなが幸せになれる社会をつくりたい」と目標を掲げた。
(外間愛也)