【記者解説】与那国の弾薬保管、町長はなぜ住民に説明しなかった? 住民軽視の指摘も


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防衛省が「貯蔵庫」と説明していた与那国駐屯地の火薬庫=2016年12月(猪股哲さん提供)

 沖縄県与那国町への陸上自衛隊配備を巡り、外間守吉町長が事前に防衛省から弾薬の保管について説明を受けていたことを明らかにした。住民説明会では「貯蔵庫」とのみ説明されており、町が防衛省と共に住民が弾薬保管に関する情報に触れる機会を奪った格好だ。隠蔽(いんぺい)の意図は否定するが、配備を誘致した立場なだけに、住民の反発を避けたいとの意図がなかったかには疑念が残る。

 外間町長が示すように、自衛隊配備に関する住民への説明主体は防衛省だ。ただ、配備に関する自身の政治的主張とは別に、首長には自治体の代表として住民に判断材料を提供する立場にある。町の方針にとって都合の良しあしを問わず、町民生活に関わる情報を積極的に収集・発信する責任を軽視しているとのそしりは免れない。

 正確な情報が提供されていなかったことが判明し、配備賛成が上回った住民投票の「正当性」にも傷を付けた。結果として、既に配備されている自衛隊への不信につながりかねない事態を招いた。自衛隊を効果的に運用する観点から、防衛省にとっても、そして配備に賛成する自治体にとっても今回のような丁寧さを欠く説明は望ましくない。

 防衛省は先島地域での陸自配備を進めている。自衛隊を配備する防衛省と地元自治体の情報開示と住民への真摯(しんし)な対応が問われている。
 (大嶺雅俊)