【記者解説】国が辺野古工事で法的手続きよりも新たな護岸での陸揚げを優先させるのはなぜか?


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大浦湾側に向かって工事が進むK8護岸=5月21日、名護市の大浦湾(小型無人機で撮影)

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で政府が新たな護岸を土砂の陸揚げに利用することは、政府と県の辺野古新基地建設を巡る新たな火種となる。実際の使用が確認されれば、県は埋め立て承認時の約束違反だと指摘するとみられる。環境保護や法的手続きより工事加速を優先させる政府の姿勢が透ける。

 沖縄防衛局は現在、一つの護岸を構造変更して埋め立て用の土砂を陸揚げすることに使っている。県は、桟橋として予定していなかった護岸を構造変更して使っていると指摘し、環境影響の予測をし直して県から変更承認を得るよう要求してきた。これに対し防衛局は県の指導に従わず、護岸の陸揚げ利用を続けてきた。

 陸揚げ場所を追加したのは、本部港塩川地区と琉球セメントの桟橋の2カ所から土砂を搬出するためだ。それにより辺野古沿岸部への土砂投入を加速させる狙いがある。これまで陸揚げできる場所が1カ所だったため、二つの搬出元があっても最大限に利用できなかった。

 ただ、辺野古側の工事をどれだけ進めても、全体の工期に影響しない上、大浦湾での工事を前に行き詰まる可能性も高い。土砂量が埋め立て全体の8割を占める大浦湾には軟弱地盤が広がり、県の承認を得た上で改良工事をしない限り先に進めないためだ。今回の対応は工事の「前進」を印象付ける意味合いが強いと言える。
 (明真南斗)