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「頼むから買ってくれ」 同級生から懇願…大麻売りにノルマも <薬物禍 危うい少年たち(上)>


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「みんな普通にやっていた」。取材に応じた少年らは麻薬汚染の実態を明かした=那覇市内(画像は一部加工しています)

 「みんな普通にやってましたよ。『売り(密売)やらない?』という誘いも受けたことがあります」

 今年5月、那覇市内のコンビニエンスストアの駐車場で取材に応じた少年(19)は事もなげに打ち明けた。

 3人きょうだいの長男。幼少期に両親が離婚した。母親と再婚した義父は、ささいなことで激高し、たびたび暴力をふるった。市内の中学に進むと、義父への反発から深夜徘徊(はいかい)を繰り返すようになった。

 空き巣、ひったくり―。中学の同級生や地元の悪友と非行を繰り返した。3年生になったある日、同級生の一人が「兄貴からパクってきた(盗んだ)」と言って、タバコ箱の中から取り出した1本を自慢げに見せてきた。「めっちゃ気持ちいいよ」。勧められるままに火を付け、煙を吸い込んだ。

 大麻だった。同級生の兄は高校生。不良グループからいじめを受けており、「ノルマ」と称して大麻を売り付けられていた。「友達の兄ちゃんは1グラム6千円ぐらいで売っていたみたい。それをパクって学校に持ってきてた。俺はそんなにやらなかったけど、友達はめっちゃはまってた」

 少年は高校には進学せず、建設業のアルバイトをするようになった。ある日、小学校の同級生から電話がかかってきた。「クサ、買わない?」

 「クサ」は大麻の隠語。少年と同様に高校に進学していなかった同級生は「自分で栽培している」という地元の先輩から大麻を大量に譲り受けたのだという。少年が断ると「モノを見てから決めてほしい」と自宅まで押し掛けてきた。

 「他の国では合法だから」「体に害はない」。自宅前の路上で必死に購入を迫る同級生は懇願するように少年に迫った。「金に困ってるんだ。頼むから買ってくれ」。なぜそれほど追い込まれているのか。それ以上、事情は聴かなかった。

 若い世代に伝染病のように広がる“大麻禍”。困り事を抱える県内の子どもをインターネット上の会員制交流サイト(SNS)や夜回りで見つけだし、支援につなげる活動を行っている日本こどもみらい支援機構の武藤杜夫代表の元には以前から、大麻を使ったという県内の中学生から相談が寄せられている。武藤氏は「高校生だけではない。中学生にも広く出回っている」と、低年齢化に警鐘を鳴らしている。

 (安里洋輔、稲福政俊)

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 昨年12月から今年5月30日にかけて、大麻の所持や譲渡などに関わった容疑で、県警が高校生を含む未成年の男女計23人を捜査している事件は、県内の教育関係者や保護者らに衝撃を与えた。事件の波紋が広がる中、大麻汚染の実態を緊急取材した。