飲酒後、自宅からわずか300メートルのカーブで寝て帰らぬ人に… 路上寝事故死の遺族が語る「路上寝事故は皆が被害者」


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路上寝事故で亡くなった夫の遺影を持って話をする女性=5月、宜野湾市の自宅

 目を潤ませ、悲しい事故を振り返る50代の女性=宜野湾市。17年前、当時48歳の夫を突然の交通事故で亡くした。事故原因は路上寝だった。「事故に関係した人全員の生活が狂った。夫は娘の成長を見守れなかった。ひいた人も道路に人が寝ているとは思わなかったはず。路上寝事故は皆が被害者になる」と話す。

 事故は自宅からわずか300メートルも離れていない路上で起きた。女性によると、数年ぶりに会った同級生たちと夫は酒を飲み、午前1時ごろ徒歩で帰路についた。その途中、幅4メートルほどのカーブの先で寝てしまい車にひかれた。「黒い何かが道路にあったが人とは思わなかった」と話した加害者は近所の顔見知りだった。

 「歩いて帰らせなければ。迎えに行っていれば」。女性は事故以来、後悔の念を抱えたまま生きてきた。夫の親族から女性の責任を問うような言葉もぶつけられた。歳月を経ても消えることのない悲しみが女性にのし掛かっている。「残される家族のことを思えば、道で寝たりせず、何が何でも家に帰ってほしい」

 夫を失い、悲嘆にくれる女性に当時2歳の娘と保険金が残された。保険金は多量の飲酒を理由に3割減額された。路上寝事故で父親を失ったのだと娘に話せずにいる。当時2歳だった娘は8月、20歳の誕生日を迎える。「この機会に事故の話を娘に伝えたい。一緒に乗り越えていきたい」と語る。

 酒に寛容といわれる沖縄だからこそ抑止効果のある条例や罰則が必要になる。誰にでも起こり得る事故だという自覚が重要だと女性は指摘する。「自分を見失うまで酒を飲まない」というモラルが何より路上寝防止につながると訴える。
 (高辻浩之)