【記者解説】陸自配備の住民投票案否決 与党の強硬姿勢際立つ 市民の意思表示の機会奪った議会


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陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票条例案を賛成少数で否決する石垣市議会=17日、市議会

 石垣市議会が石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票条例案を否決した。実質的な議論に踏み込むことはなく、早期の幕引きを図りたい与党の強引な姿勢を印象付けた。議会が市民の意思表示の機会を再度奪い、配備計画を巡り賛否がある市民の溝をより深くした格好だ。

 今回の条例案は有権者の約4割に当たる1万4326筆の署名を集めたものの、「審議不足」を主な理由として議会が否決した直接請求の流れをベースに議員提案された。

 ただ駐屯地建設が3月に着工されたことなどを踏まえ、条例案を審議した特別委員会で与党側は当初から「住民投票は必要ない」との立場を堅持した。実質的な議論に踏み込むことなく、招致した参考人への質疑すら認めないまま、多数決の採決による議事進行を重ねて今回の否決に至った。

 直接請求において十分な議論を経ないまま否決されたのは、住民投票実施を求めながらも結論を急いだ野党の責任も大きかった。だが今回は与党の強硬姿勢が際立つ形となり、住民投票実施を求める市民からは与党や、与党を支える市長に対する批判が強まることも予想される。法的措置などを探る動きもある。

 配備への賛否は割れる一方で、考えを決めかねている市民も多い。その中で住民が考え、意思を示す必要性を否定した議会の判断が、市民の思いに今後どう影響を与えるのかが注目される。
 (大嶺雅俊)