【深掘り】玉城デニー知事の尖閣発言撤回 沖縄県と石垣市の溝露呈 八重山にどう向き合う?「攻撃材料」の思惑も


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先月の定例会見での尖閣諸島に関する自身の発言撤回について記者会見で答える玉城デニー知事=17日午後、県庁

 玉城デニー知事は17日、尖閣諸島を巡って定例記者会見で発言した内容を撤回した。同日には尖閣諸島を行政区域に持つ石垣市議会が、市政与党の提案した知事発言への抗議決議を賛成多数で可決しており、火消しを急いだ格好だ。尖閣を巡る意識の違いとともに、市政与党と県の溝も露呈した。玉城知事の八重山に対する向き合い方へも課題を突き付けた。一方、石垣市議会は玉城知事の真意を確かめる前に抗議決議に踏み切っており、玉城県政への「攻撃材料」としたい保守系の思惑も透ける。

 玉城知事が撤回したのは、5月31日の定例会見での「中国公船がパトロールしているので故意に刺激するようなことは控えなければならない」との発言。市議が乗る漁船が中国公船に追尾されたとする件への見解を問われ、述べた。

 石垣市は尖閣を行政区域に持つだけに尖閣問題への関心は高く、中国に対する県の態度が不鮮明だと捉える市民も多い。玉城知事は17日、抗議決議を受け入れた上で「尖閣を巡る問題を重要視してきた」という県の立場を強調し、事態の沈静化を図った。

 関係者によると、発言撤回は玉城知事自身の意向だった。発言撤回までせず誤解を解くことはできなかったのか。県幹部の一人は「抗議決議までされているからね」と眉間にしわを寄せた。

 県関係者の一人は「知事は(中国との問題も)対話で解決していくべきだという意味で言った」と解説し「抗議決議に至る前に知事の真意を確かめるなり、(県と市の問題も)対話での解決を模索してほしかった」と唇をかむ。

 抗議決議を巡っては13日の石垣市議会の議会運営委員会で、尖閣周辺で安全に操業できる環境整備を求める国への意見書も併せて提出することで意見が一致した。だが17日に出たのは玉城知事への抗議決議案だけだった。提出者で自民会派の石垣亨氏は「(意見書も)最終日までには」と述べた上で「知事は離島を軽視している」と批判した。野党市議の一人は「参院選前のタイミングで抗議することで、知事が八重山を軽視していると印象付けようとしているのでは」と指摘する。

 ただ翁長雄志前知事からそれ以前の知事と比べて八重山に足を運ぶ機会が少なくなったとして「オール沖縄」が支援した知事の八重山に対する関心度の低さを懸念する声は、地元の「オール沖縄」関係者からも漏れ続けている。

 玉城知事の発言撤回に石垣氏は「対外的に誤ったメッセージを修正できる」と評価した上で「これからはもっと離島にも目を向けてほしい」と求めた。
 (大嶺雅俊、明真南斗)