沖縄県民が日常生活の中で「沖縄戦」を感じるもの…不発弾、遺骨、所有者不明土地 戦後処理まだ終わらず


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 戦後74年目の「慰霊の日」を迎えた。激戦地だった沖縄では不発弾処理や戦没者の遺骨収集、所有者不明土地の情報収集など課題が残されたままで、「戦後」はまだ終わっていない。米軍施設の返還や商業施設整備に伴う土地の開発などの度に不発弾が見つかり、処理に伴う住民の避難などで沖縄戦を想起させ、不安と不便を強いている。約3千体の遺骨もまだ収集できていないとされる。収集できても、どの戦没者の遺骨か不明な場合も多く、厚生労働省が進める戦没者遺骨のDNA鑑定のデータベース化も急がれる。

[不発弾]いまなお2000トン眠る

マンション建設工事で見つかった不発弾。白い布をかぶせてある部分が信管=2018年12月16日、那覇市宇栄原

 戦後74年がたってもなお、県内では1900~2千トンの不発弾が地中に眠ると推測されている。沖縄戦で投下された爆弾のうち、不発弾となったのは推定1万トンとされ、現在もその5分の1程度が地中に眠っている計算になる。不発弾は県民生活の安全を脅かし続けているほか、処理に伴う工事の中止や交通規制、避難指示などで県民に大きな負担を強いている。

 陸上自衛隊那覇駐屯地と海上自衛隊沖縄基地隊によると、2018年度の処理件数は678件、処理重量は20・7トンだった。県防災危機管理課によると、ここ数年間は平均で年間約30トンペースで不発弾の処理が進んでいる。全ての不発弾処理を終えるのは約70年後を見込んでいる。

 09年1月には糸満市小波蔵の水道工事現場で、作業員の男性が重機で掘削していた際に米国製250キロ爆弾に触れて爆発した事故も発生した。作業員男性が右目の視力を失うなどの重症を負ったほか、近隣の養護・特別養護老人ホームのガラス100枚以上が割れ、入所する男性がガラスで足を切るなどの被害に遭った。

 18年1月には那覇市松尾の「国映館」跡地のホテル建設現場で見つかった米国製50キロ爆弾1発の不発弾処理が行われた。処理に伴い、国際通りを含む半径166メートルが一時封鎖され、住民約1千世帯計約2500人、ホテルや土産店など約350事業所が避難対象となった。12月には、那覇市宇栄原のマンション建設現場で見つかった不発弾処理が実施され、モノレールの運休を余儀なくされたほか、近隣住民約800世帯と100事業所の約1500人が避難対象となった。

[所有不明土地]依然98ヘクタール、2705筆

 沖縄戦によって土地関係の公図、公簿類が焼失し、いまだに所有権が不明となっている所有者不明土地は今年3月31日時点で98・27ヘクタール、2705筆が存在している。これらの土地は復帰特別措置法に基づいて県や市町村が管理している。戦後74年が経過し、所有者の特定が一層、困難になる中、管理する県や市町村の費用負担が続くなど課題が取り残されている。

 所有者不明土地は沖縄戦終了後の1946~51年に米軍施政権下で行われた土地所有権認定作業で、何らかの理由で所有者から申請がなかったり、申請はされたが所有権証明書の受領がなかったりした土地など。土地の地目が「墓地、社寺用敷地、霊地、聖地」などに属する場合は土地の所在する市町村が管理を行い、それ以外の地目は県が管理している。県管財課によると、ここ数年は数件程度、土地所有者が判明し、返還される微減傾向が続いている。

 県は18年度までに県内にある所有者不明土地の調査を一通り終えた。本年度は所有者不明土地管理特別会計に1億6900万円を計上し土地の管理に当たっており、国と今後の対応を検討している。

[遺骨収集]高齢化で活動中断も 収骨数は年々減少

 県の推計によると、沖縄戦戦没者の遺骨は2850体が未収骨の状態にある。県内収骨数は2015年度まで毎年100~200体で推移してきたが、16年度は29体、17年度は7体、18年度は暫定値で18体と大幅に減少する傾向にある。遺骨収集をしてきた県遺族連合会などの団体が近年、高齢化や安全な場所での収骨を終えたことなどを理由に中断しているためだ。

 県平和祈念財団戦没者遺骨収集情報センターは昨年度、初めて厚労省から提供を受けた過去の米公文書から遺骨の埋葬場所をある程度特定し、未収骨情報の収集を試みたが情報は得られなかった。同センターの大城光男センター長は「未収骨情報が年々少なくなり、情報の精度も低い。戦後74年たって地形の形状が変わっているので場所の特定も難しくなっている」と話す。

 一方、厚生労働省は遺骨の個人を特定するため、2003年からDNA鑑定を実施しているが、県内収集分で身元判明は5件にとどまっている。5件はいずれも県外出身の軍人で身元が推測できる遺留品が残されていた。民間人で身元が判明したケースはまだない。