里子が20歳になるが、難病で自立は難しい…「成人後も大卒まで支援を続けたい」里親が訴え


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社会的養護自立支援事業による生活支援を求めている里親女性。「里子からたくさんの喜びや幸せをもらっている」と涙ながらに語った

 難病を抱えながらも勉強に励む大学2年の女性(19)を養育している本島中部在住の里親(65)が、里子が20歳になった後も大学卒業まで同じ環境で過ごせるよう、行政の生活支援の継続を求めている。里子は7月1日に20歳の誕生日を迎え、社会的には里親と「他人」となる。病気のため、主治医からもアルバイトをしながらの通学は厳しいと言われており「安心して勉強に打ち込めるよう、生活基盤を固めてほしい」と訴えている。

 厚生労働省は里親などに委託されている子どもが20歳になった後も、22歳の年度末まで居住や生活費の支援を受けることができる「社会的養護自立支援事業」を2017年4月にスタートさせた。事業実施は都道府県などが判断。沖縄県はことし4月から相談業務を始めているものの、居住や生活費支給の支援は導入していない。

 里親はことし3月に県中央児童相談所から里子の自立支援計画書を受け取った後、5月に社会的養護自立支援事業による生活支援を求める意見書を県に提出した。現在、里親手当などを受けているが、7月からそうした支給がなくなる。

 里親によると、委託を受けたのは里子が2歳の時から。生まれつき体内の細胞の働きが弱い難病を患っており、頭痛、筋肉痛、体温調節障害、疲労感が強いなどの症状がある。里子の実妹も一緒に育てていたが、6年前に同じ難病で亡くなった。妹の病の判明をきっかけに、里親は研修を受け、専門的ケアが必要な児童を養育する「専門里親」に登録し、病と闘う里子と向き合ってきた。

 里子は「同じ境遇の子どもの手助けができるようになりたい」として公認心理師の資格取得を目指し、県内の大学へ進学した。里親家庭で生活できるのは原則18歳までだが、社会的養護が必要として20歳までの延長が認められた。今も体調に注意し、定期的に通院しながら過ごしている。
 (前森智香子)

◆状況で22歳まで延長も 里親制度と自立支援事業

 虐待や死別などさまざまな事情で実親と暮らせない子どもを家庭に迎え入れる里親制度。児童福祉法による仕組みで、里親家庭での生活は原則18歳までだが、新たな支援事業の下で状況に応じて22歳の年度末まで延長できる。県内では今年から相談支援が始まったが、同じ家庭にとどまって生活できる居住や生活費支給の支援は導入されておらず、自立への道は険しい。

 県青少年・子ども家庭課によると、県内で里親委託を受けているのは2017年度末時点で128世帯188人。国は新たに「社会的養護自立支援事業」として、20歳になるまで里親家庭で過ごし、その後も支援の必要性が高い里子を対象に、居住や生活費などを支給する制度を整えた。費用は国と自治体が2分の1ずつ負担する。厚生労働省の担当者は「事業実施は自治体の判断だが、国としては十分な予算を確保しており、できれば実施してほしいというスタンスだ」と話す。

 県里親会の副会長を務める崎原盛親さん(47)は「18歳で里親家庭から自立して学校生活を送るというのは、とてもハードルが高い」と指摘する。これまでも中退したり、精神的に落ち込んで休学したりするケースは少なくなかったという。

 崎原さんは、沖縄での自立支援事業は、まずは相談業務を始めたばかりだとする県の主張に一定の理解を示しつつも「今回の難病の里子のケースは、通常より課題が大きい。事業を活用し、これまでと同じ関係性の中で生活を続けることが望ましい」と話した。