【記者解説】隠蔽体質を露呈 陸自情報保全隊配備の何が問題か?


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 宮古島市と与那国町への自衛隊・情報保全隊配備を地域住民をはじめ県民に周知せず、防衛機密を盾にした自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質の一端が表出した。情報保全隊には防衛機密の漏えいなどとは関わりのない国民を監視した「前歴」があり、人権のほか、表現や集会の自由にも関わる重要な案件を伏せていたことになる。

 情報保全隊の表向きの任務は内部での情報管理だが、同隊が国民の動向、特に政府方針に反対する個人や団体について情報を収集していたことが明らかになっている。2007年に自衛隊のイラク派遣に反対した市民や団体を監視し、後の裁判で自衛隊の監視行為の違法性が認められた。

 専門家は県内の離島住民も監視対象になる可能性を指摘している。防衛省の説明通り、内部の情報管理のみに当たる部隊ならば、なぜ住民説明会で明確にせず、市民の情報公開請求に一部を黒塗りにして提出したのか疑問だ。

 自衛隊に関して防衛省が重大な事実を明かさず、後から判明した事例は今回ばかりではない。宮古島駐屯地でミサイルは置かないと説明していた「保管庫」に迫撃砲や中距離多目的誘導ミサイルの弾薬を保管していたことが開設後、明らかになった。

 自衛隊基地を整備するなら、政府には近接する住民に対し生活への影響などについて丁寧に説明する責任がある。情報保全隊の配備を明らかにせずに自衛隊配備を進めたことは住民を軽視したと捉えられかねず、国民の生命と財産を守るという大義の下で進められている南西地域の防衛力強化計画の正当性を揺るがしかねない。

(明真南斗)