教育

部活巡り県費を不正使用 沖縄の高校吹奏楽部 調整費を楽器購入に流用 複数の業者にプール金

 小禄高校吹奏楽部の顧問らが2015~17年度の間、県費から役務費として支出した「楽器調整費」を楽器業者にプールし、部活動で使用する楽器の購入費などに充てていたことが11日までに分かった。琉球新報の取材に対し、県費の支出に関わった元副顧問の男性教諭や複数の業者が明かした。実際に楽器を調整する費用は部費などを原資とする保護者会費から支払われていたという。同校によると、3年間で約146万円の県費が支出されていた。業者らは私的な流用を否定した。


 役務費は県の教育費のうち、高等学校費の中に含まれる予算。学校側が予算執行を起案し、支出される。校内のパソコンや実験器具の修理などの費用として使われている。

 元副顧問や業者によると、事前に「調整費」として使える県費の額を顧問や副顧問が把握して業者に伝え、その額に見合う見積書を業者が作成していた。「プール金」は業者が管理し、顧問の注文に応じて楽器の購入費に充てていた。プール金は複数の業者にあり、業者間での金銭のやりとりはなかったという。

 吹奏楽部はマーチングバンドで使う楽器のリースや修繕費、遠征や練習に伴う移動費など多額の活動資金を必要としている。一方、部活は教育課程外の位置付けで、部活のための楽器を県費で購入するのは難しいため、顧問や業者が一体となって県費をプールし、楽器の購入資金を確保していたとみられる。

 同校には17年度に注文された約85万円の打楽器ビブラフォンが18年度に納入された。学校側に楽器の購入記録はなく、納入業者は「プール金で購入した」と明かした。楽器は現在も同校が使用している。

 問題となっている期間の後に赴任した顧問が同校の楽器を調査したところ、備品台帳にはない楽器が多数あることが判明した。小中学校などから借りていた楽器を返却しても多数の楽器の一部が残っており、これらの楽器がプール金で購入されたとみられる。同校によると、現在は適正に県費を支出しているという。

 県教育委員会は元副顧問の指摘を受けて調査している。




■言われるままにうその書類作成 元副顧問 自責の念から体調崩し休職

 小禄高校吹奏楽部で楽器購入を巡る県費の不正支出が発覚した。関係者の話では多額の経費を必要とする中、顧問と業者が一体となって不正を繰り返し「プール金」を確保していたことがうかがえる。「部活のため」とはいえ、初任校で不正に加担させられた元副顧問は、自責の念から休職に追い込まれた。「教育課程外」という理由で学校や教育委員会の目が届きにくい部活の場で起きた問題であるだけに、教育界に与える衝撃は大きい。


県費から「調整費」と偽って支出されたプール金で購入したビブラフォン

 小禄高校吹奏楽部の楽器購入を巡る不適切な会計処理に加担した元副顧問の男性教諭は、2015年4月に採用され、同校が初任校だった。慣れない環境の中、言われるままに偽りの書類を作成させられた結果、精神的に追い込まれて適応障害を発症し、現在は休職している。ことし2月に公務災害の認定を県教育委員会に申請すると同時に、告発文も提出し、処分を待っている。

 赴任当初、初任者指導教諭でもあった顧問の会計処理に疑問を持ちつつも、通常業務の一つと考え、倣っていたという。業者は頻繁に音楽教官室に出入りし、顧問と「プール金」に関する会話もしていた。

 罪悪感を抱くようになったのは顧問が替わった16年度からだった。音楽の授業中、部員でない生徒にマリンバなどを演奏させていると、新しい顧問が教室に割り込み、楽器の使用をやめるよう指示された。演奏していた生徒は泣き出したという。「県費」で購入したとみられる楽器を使えなくなり、違和感を覚えた。

 さらに新しい顧問はプール金を確保するため、業者との不正な会計処理を急ぐように強く指示するようになった。「お金のことはしゃべるな」と、保護者と会話することにくぎを刺すこともあったという。不正に関与したという自責の念に加え、掛け持ちしていた合唱部の活動を制限されるなどの嫌がらせも重なり、17年10月、自宅で倒れた。

 「自分がやったことに関して、しっかり処分を受けてから復職したい」。元副顧問は琉球新報の取材に、苦しい胸の内を明かした。




■「いけないと分かっていた」楽器業者が不適切処理認める 私的流用は否定 他校についても示唆

 小禄高校吹奏楽部のプール金を管理していた楽器業者2社は、琉球新報の取材に「いけないこととは分かっていた」と口をそろえ、会計処理が不適切だったことを認めた。いずれも「業者側にも顧問側にも私的な流用はない」とし、楽器や備品を購入するためだけに使ったと強調した。今回、不正会計処理が判明したのは2015~17年度だが、それ以前から同じ手法でプール金をつくっていたことや、同高以外でもプール金があることも示唆した。

 業者によると、楽器調整費をプールすることは顧問側から依頼された。予算に合わせた見積書を作成し、その分が口座に振り込まれたという。複数の学校から一つの口座に振り込まれるが、出金はせず資料上で学校ごとの収支を管理したという。

 県内の学校にある楽器は1987年の海邦国体時に購入した物が多く、実際に修繕・調整する必要はあり、必要額を保護者会費から受け取っていたという。

 那覇市内の業者は15年度以前からプール金を管理していたことを明かし「こちらからすれば(購入費と調整費を)差し替えただけで、収支に変わりはない。ただ疑問が出る場合もあるから、ちゃんとしてほしいという思いはあった」と語った。

 沖縄市内の業者は「いけないとは分かっていたが、予算を使わなければ次年度に減らされる可能性がある。マーチングはお金が必要なのに、県費は使い道が狭い。一括交付金のように自由に使える仕組みがあれば、このようなことはしない」と語った。




■吹奏学部の年間支出440万円、部費では賄えず

 琉球新報が入手した小禄高校吹奏楽部の2016年度保護者会会計報告書によると、支出は年間約440万円だった。そのうち楽器の修繕費が約90万円、運搬費が約90万円、リース代が約74万円で、楽器に関する費用だけで約250万円を要していた。元顧問や業者が県費を不正に支出してプールしていた背景には、保護者会費だけでは楽器の購入が難しかったことも挙げられそうだ。

 会計報告書によると、収入は部員が払う部費が約270万円。部費だけでは年間支出の約440万円に届かず、定期演奏会による収益やタオル販売などの資金造成に頼っていた状況がうかがえる。

 卒業した元部員によると、定期演奏会のチケット販売、パンフレットに掲載する広告営業も部員が担っていたという。木管楽器のリードや打楽器のスティックは「消耗品」として保護者会費から支出せず、部員が個人で負担していた。県外大会遠征にも1回当たり3万~4万円支払っていたといい、部費以外の負担も大きかった。









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