「毎年100人の減少」。久米島町で黒糖の製造販売を手掛ける儀間一美さん(52)は、目にした数字に「やばい」と思った。第2次町総合計画(2016~25年)の作成に関わっていた。「このままでは高校もなくなり、子どもたちが島に帰ってこられなくなる。役場任せでは駄目だ」
17年4月、移住・定住を進める「ドリー部チャレンジ」がスタートした。代表に就いたのは儀間さん。町民、役場、議員の3本柱がそれぞれチームをつくり、その集合体が「ドリー部―」だ。「各自ができることをやろう」と声を掛け、移住サポートや子育て支援など約10チームができた。30~40代を中心に約100人が活動している。
同年秋、第1回「夢まつり」を開催した。掲げたのは「町民の町民による町民のための島づくり」。風船で埋め尽くされた会場で、各チームが活動を発表した。それらが評価され、昨年、市民の優れた活動をたたえる「マニフェスト大賞」の特別賞に選ばれた。儀間さんが手応えを語る。
「模合でも人口減少の話が出るなど、町民に危機感が広がってきた。小さなことでも、自分たちでやると『自分ごと』になる。私たちが頑張って、子どもたちが当たり前に暮らせる島を残したい」
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横浜市出身の松川愛美さん(36)は3年前、久米島に移住した。夫と2歳の息子との3人暮らし。「ドリー部―」の一つ「久米島ブロガーズ」の一員として、ブログで「ありのままの久米島生活」を発信している。
ブログの経験はなかったが、2年前に「移住の参考になれば」と書き始めた。更新は不定期だ。「無理なく続ける」がチームの方針。家族の日常をスマートフォンでつづっている。
先日、神奈川県の主婦から「ブログを見て久米島暮らしを妄想しています」とメッセージが届いた。反響があったのは初めてで、うれしかった。松川さん自身、久米島に10年ほど通った末の移住だった。今も、島の魅力にどんどん引き付けられている。
「ディズニーランドみたいなテーマパークも、マクドナルドもない。でも着飾る必要もないし、私の欲しいもの、会いたい人、なりたい自分、全てが久米島にある。自分らしく、楽に生きられる」
久米島生まれも、移住者も、その思いは共通している。「自分たちで自分たちの島を守る」。町が目指す「夢つむぐ島」へ、挑戦は続く。