芸能・文化

<メディア時評・政治とメディアと若者と>報道の透明性確保を 政治選択へ情報信頼度が鍵

 パルコにセブン―イレブン、沖縄にも「内地並み」の熱風が上陸する2019年夏である。そしてまた、政治の世界においても「東京化」が、全国レベルで進んでいるといわれる中、沖縄の参議院選挙が改めて注目される。では、政治とメディアの関係性において、主として東京では何が起きてきたのか、改めて確認しておこう。


首相との高級会食


 すでに多くの指摘があるように、安倍晋三首相のメディア戦略は硬軟の使い分けで、批判的メディア媒体に対しては国会でも具体的名称を出して厳しく批判し、また総裁を務める自民党でも取材拒否や抗議などの厳しい対応をとってきた。その一方、親和性の高いメディアには積極的に取材に応じるほか、紙面や番組に登場する傾向が強い。さらに、個人ベースで見ても、特定のメディア関係者との接触が、新聞動静欄だけからも明確に伺われる。

 より具体的に誰と、どのランクの会食をしているか、学生の調査から見てみよう(専修大学・ジャーナリズム学科・言論法研究室調べ)。会食場所を「食べログ」表示の値段で分類すると、社によって会食値段に違う傾向がみられる。具体的には読売・日本テレビが、回数が多いとともに値段も平均的に一番高い。多くの社が3万円クラスの中、4万円クラスの会食が多いし、回数も政権期間中すでに40回を超え、回数では次に多い、朝日・テレビ朝日、日経・テレビ東京、NHK、時事の4倍と大きな開きがある。ちなみに、全社でみると最多料金帯は2万円クラスで、次が3万円クラスとなっている。

 会食自体が問題ということではないにしろ、経営トップと会うことによる政策決定への関与があるとすれば(最近の例では、官邸筋が発信源だとされる民放不要論に対する放送政策や、消費税率引き上げに伴う軽減税率の新聞適用など)、一般市民からの疑問に答えるだけの透明性の確保が、政治とメディアの両者に求められることになろう。

 また、メディア媒体間格差は、まさに官邸メディア戦略の1つとして認識せざるを得まい。関連性に確証はないが、たとえば読売は首相インタビューが多い媒体であって、その紙面化される前に会食等が設定されているパターンが多い(2011年6月、13年4月、14年7月、17年4月)。


メディア説明責任


 会食に限らない接触回数では読売・日本テレビのほかに、NHKが多い。【新聞社】読売→産経→日経→共同→毎日→時事→朝日、【放送局】NHK→日本テレビ→フジテレビ→テレビ朝日→TBS→テレビ東京。これはとりわけ番組収録などで選挙前後に増えることと関係している。最近は定例化した感さえあるAbemaTVへの出演が話題になるが、全国放送であるNHKを重視していることの表れともいえよう。

 また個人別でみると、会っている回数が一番多かったのは読売新聞の渡邉恒雄会長であり、同氏との接触のほとんどは会食であった(会食だけで約30回、政権期間中、以下同じ)。ちなみに次に多かったフジテレビの日枝久会長は、自社関連のコースでのゴルフがお決まりのパターンだ。フジでは日枝会長以外との面談記録がないのが特徴であろう。

 ほかに、接触回数が10回以上を数えるのは多い順に、小田尚(読売)、粕谷賢之(日本テレビ)、田崎史郎(時事)清原武彦(産経)、大久保好男(日本テレビ)、曽我豪(朝日)、福山正喜(共同通信)であった。ほかに目立つのは、島田敏男(NHK)、芹川洋一(日経)、田中隆之(読売)、朝比奈豊(毎日)、山田孝男(毎日)あたりであろうか。なお、読売の場合は役職のあるさまざまな社員と多く会っているのに対し、他紙・他局の場合は、特定の限られた者である傾向が強い。

 会食の規則性を見つけることは難しいが、13年から毎年12月にメディア関係者との会食が定例化している。また14年から、5~6月に固定メンバーでの会食を繰り返していることが分かる。たとえば前述の接触回数が多い記者の中でも、小田、粕谷、田崎などとの会食もその1つである。官邸を継続的にウォッチし、報道する意義はある一方で、「スポークスマン」にならないことの線引きが、読者・視聴者にきちんと伝わることが求められていることになる。そうしないと、政府益を守るための報道と見られ、信頼感の喪失につながりかねないからだ。これもまた、メディアが負う説明責任の1つであろう。



若年層の政治指向


 こうした政治とメディアの関係性を、政治に冷めていると一般にいわれる若年層はどう感じているのか。あるいはそもそも、若者は本当に保守系政党支持なのか、もう1つの学生調査(17年秋の衆議院選挙が対象)を紹介しておこう。すでに、広く学生間に、改革派という意味でのリベラル政党が自民・公明・維新各党で、守旧派が共産および立憲民主党・国民民主党などという図式が出来上がっている。そこで、そもそも保守という用語自体が混乱を招きかねないが、ここでは古典的な意味合いで使用していることをあらかじめ了解いただきたい。

 東京・神奈川5大学約500人に対するアンケート調査で普遍性があるとは言い難いが、一定の参考にはなるだろう。まず投票者中の投票先政党別割合は、自民党が約4割と断トツであった。2位は立憲民主の約15%で、2倍以上の差があるとみるか、一般世論調査の差より小さいとみるかは評価が分かれよう。その投票理由であるが、自民投票者は、公約を読んで、信頼できるからと並んで、消去法でという回答が多いのが特徴といえるだろう。ほかには、家族や知り合いの評価からという回答も一定数を集めた。一方、立民は公約を理由とするものが多かった。

 投票しなかった理由で圧倒的に多かったのは、用事があったから。ほかには、投票所が遠い、を挙げるものが多かった。投票したい政党がない、興味がない、はそれほど高い数字を示してはいないが、あえて本音を言っていない側面もあるかもしれない。ちなみに、もし投票していたらどこに投票したかの問いについても、3割が自民党と回答し、第2位の立民の3倍を示している。

 もう1つ利用メディアの関係では、政治情報の入手先は、テレビ=65%、SNS=23%、新聞=11%という数字を示した。これが選挙期間中の政治情報の入手先となると、テレビ=72%、SNS=13%、新聞=13%と、SNSが10ポイント減少した分が、ほぼそのままテレビに移っている傾向がみられる。いずれにせよ、テレビの影響の大きさを示す結果となっているが、一方で、新聞がそれでも1割を超えていることも忘れない方が良かろう。それは同時に聞いている「政治情報を得るのに信頼を置いているメディア」としては、新聞=44%とトップで、ほぼ同率でテレビ、SNSは10%以下に低下するからだ。また、普段利用しているメディアと信頼しているメディアが同じと答えた学生は半数以下という結果となっている。

 ファクトチェック等の新しい試みが始まっている今、また違ったメディア接触状況が生まれていることとも思われるが、政治選択情報としては、ネット情報よりもマスメディア情報が活用されている可能性が高いことを念頭に、政治情報の信頼度をメディア自身が上げていくことが期待される。

(山田健太、専修大学教授・言論法)

 



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