家焼かれ、離婚され、ののしられ…今も続く差別に「連鎖断つ時」 首相直接謝罪に沖縄の元ハンセン病患者家族 政府の一律救済に期待


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安倍首相との面会後、記者会見する宮城賢蔵さん=24日午前、国会

 【東京】24日、ハンセン病家族訴訟の原告団との面談で安倍晋三首相が謝罪した。患者家族に安堵と喜びが広がったが、米統治下の沖縄は補償の対象外とした措置への懸念は残る。原告団代表6人のうちの1人として安倍首相と向き合い、握手した沖縄県東村出身の宮城賢蔵さん(71)は面談後、「沖縄だけ別の扱いをされることが、一番不愉快だ」と話し、米統治下の沖縄も対象とするよう強く求めた。

 宮城さんは面談中、安倍首相の一挙一動を静かに見つめた。米統治下の沖縄に関する補償など具体的な交渉はこれから。首相から具体的な言及はなかったが「総理の目を見ると、やってやるぞ、という気持ちを感じた。一律で救済すると確信している」と語った。

 母親がハンセン病患者で「菌がある」という理由で住居を焼かれるなど激しい差別を経験した。「お前見ておけよ、と僕が言うと、言われた本人もびくびくしながら過ごすことになる。被害者が加害者に、加害者が被害者になる。こういう世界はなくしたい」。宮城さんは不幸の連鎖を断つ時だと期待を込めた。

 30代の女性原告は、判決が2002年以降の国の責任を認めていないことを批判する。患者だった母から病歴を直接聞いたのは3年前。だが、母の病歴を知る近所の子どもからののしられ「友達をつくることも恐ろしくなった」と振り返る。02年以降に親の病歴を夫に知られ、離婚された同世代の原告もいる。「周囲に知られると差別され、平穏な生活がひっくり返されるという状況が今も続いている」と訴えた。

 60代の女性原告は非公開で行われた根本匠厚生労働相との面談で「(勝訴後も)声を上げずに社会の隅に追いやられている人もいる」と訴えた。差別や偏見にさらされた過去を振り返り「私たちの人生被害が、茶話になる日が訪れるよう力を貸してほしい」と語った。