【識者談話】沖縄の健診所見率全国最悪なのはこれが背景に


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青木一雄氏(沖縄産業保健総合支援センター所長)

 定期健康診断の所見率が改善しない背景には、幼いころからの食習慣による蓄積と地政学的な環境要因がある。さらにサービス産業が中心になってきた産業構造の変化も影響しているのだろう。

 県内では、欧米型の食生活が定着するなど、生まれてから小中高校、就職するまでの過程で高脂肪、高カロリーな食習慣を送っている傾向が見られる。他にも子どもが朝食を欠食したり、夜遅くまで起きたりすることも健康に影響するとデータに出ている。

 環境要因としては沖縄特有の亜熱帯という気候の中で、県外と比べて公共交通機関ではなく自家用車に頼る生活が重なり、歩く習慣が広がらず運動不足になっているのだろう。

 詳しい調査がなく一概には言えないが、サービス産業の割合が高くなるにつれ、深夜勤が多い労働条件も生活習慣病を引き起こす一因になっていると思われる。

 所見は慢性疾患をベースにしたものが多く、生活習慣に起因している。喫煙やアルコールに寛容な文化も影響を及ぼしている。一方で再検査をしないなど症状を放置する人が多いとの報告もある。所見率の上昇は所見を受けた人が改善しないのに加え、新たに所見を受ける人が出ているためではないか。

 このままでは県が目指す健康長寿は厳しい。残念ながら、こういうデータは一朝一夕に変わるものではない。しかし、そのままにすることはできない。県や職場を挙げて運動習慣を見直し改善を促すとともに、就学時から健康や生活習慣について考える取り組みが重要になってくる。(談)
(青木一雄氏、沖縄産業保健総合支援センター所長・産業医学)