全国3位に導いた渡口の思いとは… 高校総体レスリング男子個人、準決勝で惜敗


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レスリング男子個人125キロ級の準決勝 静岡県の宮内勇真(上)の足首をつかんだものの倒せない北部農林の渡口妃龍=1日、熊本県玉名市総合体育館(真崎裕史撮影)

 【南部九州総体取材班】全国高校総合体育大会「感動は無限大 南部九州総体 2019」は1日、各地で競技を行った。レスリング男子125キロ級の準決勝に勝ち進んだ渡口妃龍(北部農林)は、1―4で宮内(静岡)に敗れるも、3位入賞と健闘した。

 攻めた。前に出た。最後の1秒になっても―。しかし勝利には届かなかった。レスリング男子個人125キロ級の渡口妃龍(北部農林)は準決勝で惜敗し、念願の優勝はならなかった。競技歴2年余りで堂々の全国3位だが、マットを降りると涙を流し「もっと上に行けるように頑張る」とさらなる飛躍を誓った。

 中学まではバレーボールに打ち込んだ。進学時、「体が大きいから」と祖父に勧められ、レスリング部に入った。2年先輩に仲里優力がいた。県勢初の国内主要大会5冠を達成するなど、圧倒的な強さを誇る憧れの存在から基本をたたき込まれた。

 きつい練習に「辞めたい」と思うこともあったが「強くなりたい」との思いが上回った。徐々に結果が出始める。今年3月の全国高校選抜で3位入賞。好成績も「組み合わせが良かった」との声が聞こえ、全国総体での雪辱を誓った。

 ところが5月に左膝の靱帯(じんたい)を傷める。「総体に間に合うだろうか」と不安に襲われた。スパーリングの再開は、大会の約3週間前。雪辱の舞台に何とか間に合った。

 個人戦8強が相まみえる1日の朝。大好きな「あいみょん」の曲でリラックスし、準々決勝に臨んだ。相手は団体戦準優勝の花咲徳栄(埼玉)の佐々木偉琉。渡口は前日の勢いそのままにローリングを3回転させて決め、11―1のテクニカルフォールで勝利した。

 準決勝で向き合ったのは伊豆総合(静岡)の宮内勇真。屋比久保監督の「前に出ろ!」の声を背に、しっかり組み合う。手首をつかんで押し出そうとするが一回り大きな宮内の体は動かない。消極的と判断され、開始1分足らずで「警告」。それが重なり1点を失った。残り30秒のタックルで足首を取るも、逆に押しつぶされた。1―4の判定負け。終了のブザーが鳴ると、左手で顔を覆った。

 悔しさと同時にすがすがしさもある。「気持ちでは負けていなかった。監督や仲間、応援してくれた人たちに感謝したい」。初心者から2年余りで上り詰めた全国3位。「練習がきついからと諦めたら、そこで終わり。諦めなければ結果が付いてくる」。次の目標は大学日本一。頂点への渇望がより強まった。
(真崎裕史)


(玉名市総合体育館)
▽男子125キロ級準々決勝
渡口妃龍(北部農林) Tフォール4分56秒 佐々木偉琉(埼玉・花咲徳栄)

▽同準決勝
宮内勇真(静岡・伊豆総合) 4―1 渡口妃龍(北部農林)