「何もかも諦めてきた人生だった」 2度のがん乗り越えた女性が語る、若い患者に必要な支援とは?


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若いがん患者の支援について講演した天野慎介さん(右)と多和田奈津子さん=1日、南風原町の県立南部医療センター・こども医療センター

 若い世代のがん患者が直面する悩みや支援を考える講演会「小児およびAYA世代のがんの支援の在り方について」(琉球大学医学部付属病院がんセンター主催)が1日、沖縄県南風原町の沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで開かれた。全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長と患者団体グループ・ネクサス・ジャパンの多和田奈津子理事が講演し、若い世代の患者には経済的な支援をはじめ、「さまざまな情報交換の場となる当事者の集いの場」「就学・就労などの社会的支援」などが必要だと指摘した。

 「AYA世代」とは思春期や若年成人に当たる15~39歳を指し、学業や就業、結婚などライフステージに応じた医療や支援が求められる。この世代は希少がんの発症も多く、患者数の少なさは医療者にとっても診療や相談支援の経験が蓄積しづらいという。

 厚生労働省検討会の資料によると、AYA世代の患者の悩みは診断や治療のことが最多の90・1%で、経済的なことの71・4%、仕事の62・5%、不妊治療や生殖機能についての58・9%が続く。一方、恋愛やセックスの悩みなどを抱える人の7割以上が実際には相談できなかった。天野さんは「AYA世代の悩みは多様だが、パーソナル(個人的)なことほど相談しづらい」と指摘する。

 中高年層のがん患者と比べ、若い患者は経済的な基盤や支援態勢も整っていないとされる。16歳と25歳の時にがんを発症した多和田さんは「何もかもを諦めてきた人生だった」と語る。今も後遺症や再発の不安を抱え、民間保険に入れず治療費を自分で負担しなければならないという。

 交流会を企画する多和田さんは「リアルな声を反映させた患者が望む支援」などが必要だと指摘し、「沖縄のオールスクラムで、AYA世代を自分のことと思って取り組んでほしい」と語った。

 増田昌人琉大がんセンター長は「まずは県民に知ってもらうことが大切。より良い環境で療養生活が送れるようにしていければ」と話した。(大橋弘基)