父とつかんだ準V 比嘉、138キロひるまず《南部九州総体2019》


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男子96キロ級、ジャークの3回目で138キロを成功させる比嘉力=3日、糸満市の西崎総合体育館(新里圭蔵撮影)

 【南部九州総体取材班】全国高校総合体育大会「感動は無限大 南部九州総体 2019」は3日、各地で競技を行った。重量挙げの96キロ級に出場した本部1年の比嘉力がトータル254キロで準優勝を果たした。3種目全てで自己ベストの活躍だった。

 比嘉力のジャーク3本目。練習でも触ったことのない138キロを監督で父の敏彦さんが申告した。父は力の両ほほを叩き、重量を伝えずに送り出した。「一本一本全力でやってこい」。プラットフォームに上がる際、重量を確認して驚いたが、バーベルに向かう途中に「絶対に取れる。自信持てっ」と父の声が聞こえた。「あんなに声を出すことは今まで一度もなかった。取らないといけない」。ひるむ気持ちはなくなっていた。

 1週間前からの大会会場での練習は、得意のジャークで130キロを落とすなど疲れが見えた。それでも「試合のための練習」(敏彦監督)として疲れが残る身体で練習を積んだ。敏彦監督の教え子で全国総体で優勝経験がある玉城安剛や比嘉貴大から試合前のメンタルなどについて助言を受けた。周囲の支えや応援を受け「自信を持てた」。

 大会当日はアップの段階でバーベルが重く感じた。スタートの重量を予定より下げ、確実に1本目を成功させる。勢いに乗った後は「軽かった」と危なげなく持ち上げた。

 父にむちゃぶりされた最後の138キロは差す時に肘を入れることを意識して難なく差し上げた。6本全ての試技を成功させ、スナッチとともに自己新を更新。セコンドで待つ敏彦監督や妹の成さん、母の聡子さんとハイタッチして喜んだ。

 敏彦監督は「100点満点」と誇らしげに健闘をたたえた。力はこれから待ち受ける厳しい練習に「耐え抜きます」と監督の目の前で誓った。見据える先には五輪の舞台がある。敏彦監督は2001年東アジア大会で3位。「父を越えないと世界は見えない」。これからも父と二人三脚で歩んでゆく。

 (古川峻)