【焦点インタビュー】バトンズ社長兼CEOの大山敬義氏 事業継承へネット活用を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
大山敬義社長兼CEO

 日本M&Aセンターを母体に設立したバトンズ(東京都)が、インターネットを活用した事業承継に力を入れている。海外で広く利用されるネットを使った事業承継を国内でも広め、企業の廃業防止や経済活性化につなげる狙いがある。沖縄県内でも中小企業の後継者不足が課題となっている。バトンズの大山敬義社長兼CEOに今後の見通しなどを聞いた。

 ―ネットを使った事業承継を導入した背景は。

 「日本は個人事業主や家族経営の会社が多く、そのような会社がないと地方の経済は成り立たない。一方で中小企業の8割近くは跡継ぎが不在で、廃業する可能性を秘めている。地方の雇用や産業を支えている中小企業を失ってはいけない。大きな企業であればM&Aのプロやファンドなどに目を付けてもらえるが、小さな会社は放置されていた。6年ほど前にアメリカで研修した際、インターネットで事業の承継先を公募する仕組みがあることを知り、日本でも広めたいと思った」

 ―ネットを活用するメリットは。

 「M&A(企業の合併・買収)の情報は金融機関などに集中しており、個人ではなかなか入手できない。ネット上で情報を公開することで若くてやる気のある経営者が企業を購入しやすい環境になる。個人でも手が出せる売買価格になっており、会社を買って独立するという選択肢も出てくる。跡継ぎがいなくなると会社を閉めてしまうケースがあるが、それはもったいない。自らが育てた企業を次の世代にバトンタッチをしたいと考える経営者は多いはずだ」

 ―沖縄も後継者不足が深刻化している。

 「県外では手遅れになりかけている地域があるが、沖縄の経営者は若く、10年くらいは猶予がある。世代交代することで良くなる企業は多い。沖縄は人口が増加して経済も活性化しており、将来的に明るい地域だと感じる。沖縄という場所に魅力を感じて、沖縄の企業を引き継ぎたいと思う県外の人もいるだろう。若い経営者が増えると活気にあふれ、雇用創出にもつながる。IT(情報技術)の活用で生産性も上がるだろう」

 ―事業承継の手法が多様化している。

 「大きい会社であれば一つ一つ時間をかけて進める必要があるが、小さい企業であればネット上でできる。規模に応じて使い分けが可能だ。沖縄で中小企業の事業承継が進めば、企業が新たな事業に挑戦するケースが出るだろう。会社が変われば地域が活性化してプラスの流れを生む。沖縄はアジアに近いので、事業を引き継ぎたいという人が海外からも出てくるはずだ」
 (聞き手 平安太一)